03



ブーブーとテーブルの上で鳴る携帯。表示を見ると、“忍足謙也”の文字があった。謙也くん?なんだろ。


「もしもし?」

『もしもし。謙也やけど』

「どしたの?」

『いや、何しとるかなーって思って』

「暇してたよ。今日は休みだしね」

『ホンマか。なら飯行かへん?俺も休みやねん』

「行く」

『ほな、7時に駅前で』

「わかった」


昨日ぶりな謙也くんの声。なんで私が蔵ノ介の家で過ごすことになったのか聞こうと思った。だってタクシーで家まで送ってくれればよかったのに。同期の子は私の家だって知ってるのに。なんでわざわざよりにもよって蔵ノ介の家に……。7時になる15分前に家から出た。駅前にはすでに謙也くんが待っていた。


「ごめんね、謙也くん。待った?」

「全然待ってへんよ。ほな行こか」

「どこ行くの?」

「うまそうなハンバーグのお店見つけてん」

「へぇー。私、ハンバーグ大好き」


私がそう言うと、謙也くんは少し気まずそうに笑った。駅から歩いて数分のところにある小さなお店。入ると、ハンバーグの良い匂いが漂っていた。


「こんなとこにこんなお店があったなんて知らなかった」

「俺も初めて知ったからなぁ」

「謙也くんはこのへんに住んでるの?」

「いや、2つ先の駅の近くやで」


お互いに食べたいものとシャンパンを注文して、乾杯をした。なんか謙也くんと二人でごはんとか中学や高校のときすらなかったことだから変な感じ。


「あ、そうだ。昨日なんで私を蔵ノ介の家に?」

「ああ。莉子、昨日めっちゃ酔ってたやん」

「え、そんなに?」

「やっぱ覚えてへんのや」

「あはは」

「で、一人で帰れるレベルやなかってん。そしたら一人の男が車やから届けよか?言うたけど、心配やん。明らかに何かニヤニヤしとってん。下心ありありな感じで」

「うん」

「そしたら白石が、俺が連れて帰るわ、言うてん。白石なら安心やろ?せやから白石ん家に」

「そうなんだ」


まぁ、知らない男にホテルに連れ込まれなくてよかったとは正直思う。でも、蔵ノ介が自主的に私を泊めてくれたと思うと嬉しかった。しばらくしてテーブルにきたハンバーグはとてもおいしかった。



あなたは私のことをどう思っているのだろうか

(おいしい!)
(ホンマや。さすが…)
(へ?)
(あ、いや、なんでもあらへん)



END





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