02

まさかの再会。お互い何も話すことができないまま、飲み会だけがどんどんすすんでいく。謙也くんが気を遣って、私と蔵ノ介に話を振ってくれた。このまま謙也くんに気を遣わせてたんじゃいけないと思って、私は日本酒を注文した。

酔えば自然とテンションもあがると思ったから。運ばれてきた日本酒をぐいーっと流し込んだ。


「おっ、莉子ちゃんいい飲みっぷりやなぁ」


なんて知らない男どもにあおられて、さらにぐびぐび飲んだ。同期の女の子は、大丈夫なん?とか言うてた。大丈夫もなにもこっちは今、飲まなければいけない状況なんだよ!


「謙也くんも飲もう!ほらほら!すいませーん!生ひとつ!」

「え、ちょ、」

「はい!ほらほらほらー!イッキイッキ!」

「はぁ!?」


テンションあがってきた私は、謙也くんに無理矢理ビールを一気飲みさせた。そして逆に一気飲みさせられたり、ただの酒癖の悪い人みたいになっていた。そして途中からもちろん記憶をなくした。





目覚めたら知らない家だった。綺麗に整頓されている家。コーヒーの匂いが漂ってきて、なんだか心地よかった。ぼふっと枕に顔を埋めると、ほんのり良い匂いがした。私は、この匂いを知っている。懐かしい匂い。


「おはよーさん」

「んん…おは……よ!?」


目の前には蔵ノ介の整った顔があって、私は思わず飛び起きた。なななななんで!?なんでなんで!?何があったの!?全く記憶にないんだけど!私をじっと見つめる蔵ノ介に頭を抱える私。はっと気付いて服の中を確かめたら、何もせえへん、という声が聞こえた。


「えっと、あの、私はなぜここに」

「お前、酒飲まんほうがええで」

「え!?」


一体何があったんだよ。おそらくかなりの迷惑をかけたに違いない。蔵ノ介は溜め息をひとつ吐いて、二日酔いは大丈夫か、と聞いて来た。


「あ、うん。大丈夫」

「さよか。ほなコーヒーいれるな」


はぁー。何やってんだ私。あんなに会いたかった蔵ノ介に、せっかく再会できたっていうのに。これじゃあただの馬鹿じゃん。ベッドから出て、改めて蔵ノ介の部屋を見渡す。一人暮らしの割りに整理整頓された綺麗な部屋。リビングに行くと、私の分のごはんがちゃんと用意されていた。はい、とコーヒーを渡されそれを受け取る。


「今日、仕事は?」

「休み」

「そっか」

「すまんけど、俺、これから用事あんねん。鍵は置いておくから、出てくときは鍵閉めてポストん中いれといてや」

「あ、うん、わかった」


見たことないようなお洒落でかっこいい服を着て、蔵ノ介は出て行った。やっぱり迷惑だったよね。せめて蔵ノ介じゃない人の家だったらよかったのに。ここにいる意味もないから、私は食器を片づけてすぐに家を出た。ありがとう、と置き手紙を残して。



あの頃とは全く違うあなたが、そこにはいた

(時は流れている)
(私はあの頃のままなのに)



END





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