last


昨日、私は部長に辞表をだした。

全てをリセットしようと思ったんだ。部長は特に何も言わず、辞表を受け取ってくれた。同期の子は皆ビックリしていたけど、最後には応援してくれた。お世話になった先輩にはお花をもらった。あたたかい職場で働けてよかった。


そして今日、クリスマス。蔵ノ介は来てくれるだろうか。きっと優しいから来てくれる。それだけでいいんだ。私の気持ちを聞いてくれれば、それでいい。私は1時間前に家をでた。キラキラ光イルミネーションを見ながら、キャッキャしているカップルを見ながら、ツリーの下に立った。寒いな。はぁ、と手をあたためていると、後ろから声がした。


「こない早よから来て、風邪でも引いたらどないするん」

「えっ」


まさか、と思った。だって1時間も前だし。でも振り返れば、優しく笑う蔵ノ介がいた。ほら、とあたたかいココアを渡してくれた。


「蔵ノ介…。彼女は?」


おそるおそる聞いた私に、蔵ノ介は一言、別れた、と言った。うそ…。なんで。だってこの間はあんなに幸せそうだったのに。


「俺、ずっと言えてへんかった言葉があんねん」

「何?」

「莉子が好きや」


卒業式の日に言いたかったんやけど言えなかった、と蔵ノ介は言った。


「蔵ノ介…」

「自分勝手やと思う。告白されて、断ったら一日だけデートしてほしいって言われて、デートしたのは、ほんま申し訳ないと思ってる」

「え?その子と付き合ってたんじゃないの?」

「付き合うわけないやん。俺にはお前しかおらんのやから」

「だって、告白されて付き合ったって噂で」

「付き合ってへん。莉子だけや」

「そうなんだ」


じゃああれは噂に尾ひれがついてしまったもので、どうして私はこの人を信じてあげられなかったんだろう。あのとき、お互いの気持ちを言えていれば、自然消滅なんてことにはならなかったのかもしれない。


「莉子」

「へ?」


クリスマスプレゼント、と言って蔵ノ介は、小さな箱を開けた。そこに入っていたのは、可愛くて綺麗な指輪で。照れくさそうに、さっき買うてん、と言う蔵ノ介が愛しくて仕方なかった。


「まだ付き合ってもないのに、こないなこと言うのもどうかと思ったけど、まぁ前提にと思ってくれたらええ」

「うん」

「結婚してくれへんか?」

「え?」

「やっぱり俺の人生にはずっと莉子が必要やねん」


かつてこんなに嬉しい言葉があっただろうか。私は溢れる涙をとめることができず、ただただ頷いた。そんな私を見て、蔵ノ介は優しく笑い、指輪をはめてくれた。


「好きやで、莉子」

「私も、好き。蔵ノ介」




大きくてとても綺麗なツリーの下で、優しい口付けをしてくれた。




きっとこれは、サンタさんからの“奇跡”というクリスマスの贈り物。




クリスマスに奇跡は起こった

(私達の物語は、)
(これから続いていくのです)




END


当初は10話で終わる予定だったんですが、まとめられず、12話という中途半端になってしまいました。

メリークリスマス!


2011.12.24 ちょこ





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