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いつもどおり仕事が終わって、帰り道。キラキラ光イルミネーションを見ながら歩く。昨日というか今日の夜中、いきなり謙也から電話がかかってきた。莉子が酔ってホテルに連れ込まれたって。しかも相手があのイトコクンで20分以内に行かないと襲われてまうとか言うからビックリした。頭で考えるよりも先に体が動いた。どこのホテルやねん、というと、大きなツリーが見えるとこやと言うた。大きなツリーが見えるホテルなんて、この時期いくらでもある。でも俺は電話を切ってすぐに走りだした。

無事でおってくれ、と。


片っぱしからホテルを探した。受付に行っては聞いて、の繰り返し。一つのホテルに辿り着いたときにはすでに20分になろうとしていた。受付で教えてもろた部屋の前に行き、ドンドンとドアを叩く。すると中から、助けて、と莉子の小さな声が聞こえた。その声を聞いた瞬間、俺は中学のとき以来の名前を呼んだ。


「莉子!」


その名前を呼んだ瞬間、何かが吹っ切れたような気がした。ああ、俺は今まで何を意地はってたんやろ。好きなら好きでそれでよかっただけやのに。莉子を助けだし、タクシーで家まで送る。そして明日の夜10時に駅前で待っていると告げられた。

そのときにはもうすでに俺の気持ちは決まっていて、今は駅で待っている。遠くから走ってくる彼女を見て、申し訳ない気持ちになった。忘れるために、付き合ったなんてひどいやんな、俺。彼女が着くなり、別れてほしいと告げた。


「やっぱり白石くんは、前の彼女を忘れられないんやな」

「知ってたんか?」

「うん。白石くんの部屋で写真見ちゃって。大切そうにしまってある彼女さんとの写真」

「ほんまにすまん」

「ええねん。一途な白石くんが好きやから」


別れるときになって初めて知った、この彼女の優しさ。こない優しい子やったんやな。ああ、そうか。莉子も優しかったっけ?いっそのことあのとき、突き放してくれたらよかったんに。莉子は持ち前の優しさで、俺を許してくれようとしっとたのかもしれない。


奇跡って起こるんやな



一人になって初めて気付く、君の大切さ

(もう絶対に)
(離したりはしない)



END





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