09 ブーブーと振動して鳴る携帯を手に取る。あれ?ここ、どこだろう…。 「え!?」 明らかにそこは知らない場所で、見るからにホテルだということはわかった。服は着ていて、少し向こうでシャワーの音が聞こえる。なんで、私、えっ、なんで!?焦りながら鳴っていた携帯に出た。 『もしもし?莉子か?』 「け、謙也くん!?」 『どないしたん?』 「あの、私、どうしよ」 『ちょっ。落ち着いて。どないしてん』 「私、すごい酔って、記憶なくて、わかんないんだけど、ホテルにいて、たぶんあのとき優しくしてくれた人が今シャワーで」 『はぁ!?どこのホテルかわからへんの?』 「わ、わからない!どこに案内があるのかもわからないし!窓からはおっきいツリーが、あっ」 偶然にもかかってきた電話にでたら謙也くんで、私は助けを求めた。けど、場所を説明しようとしたら、電話を男の人に取られてしまった。 「どこに電話しとるん?」 「いや、あの、これは、かかってきて」 「へぇ。忍足謙也?君、コイツと付き合うてんの?」 「ちがっ」 『は!?その声、もしかしてお前、侑士か!?侑士やろ!?』 「せやで、謙也。まさかお前がこない可愛い子ぉと知り合いとはなぁ。世間ってせまいなぁ」 『何もしてへんやろな』 「そない怖い声だすなや。せやなぁ、あと20分時間やるわ。20分以内に来ぉへんかったら、何するかわからんからな」 そういうとその人は電話を切ってしまった。まさか謙也くんとこの人が知り合いなんて。私は睨んで警戒するが、睨んでも可愛いだけやで、と言われてしまった。 「謙也くんと、どういう関係なんですか?」 「イトコ同士や。聞いたことあらへん?」 「あ!もしかして東京に住んでるイトコ?」 「せやで。何や知っててくれてんやん。改めまして、忍足侑士や。よろしゅう」 「あ、はい。山田莉子です」 って何を呑気に自己紹介してんだ。っていうかさっき侑士くんって20分以内に来なかったら何するかわからないって言ったよね?しかも謙也くんには場所すら伝えてないし。それからの時間、侑士くんは私の相談に乗ってくれたり、他愛もない話をしてくれて、少し打ち解けてしまった。 目覚めたら知らないホテル (それにしても謙也くんのイトコとか) (ほんと世間ってせまい) END |