初めてのお宅訪問 「きき、今日の俺、どどどどどうや?変やないかな?」 「何をそんなどもってんねん」 アホ!これがどもらずにいられるか!今日は彼女であるまゆの家に初めてお邪魔することになった。誰もおらんのかと思いきや、お父さんとお母さんがいるらしい。なんでやねん。どうやらまゆのお母さんが連れておいでって言うたらしい。そんなん言われたら行くしかないやん!っていうことで今日行くことになってんけど、アカン。緊張しまくりや。変な汗かいてきた。 「別にそんな緊張せんでも」 「緊張せずにいられるか!彼女のご家族やぞ!嫌われたらどないすんねん!」 「いや、べつに嫌わへんやろ。それより、右手のその紙袋何なん?」 「これは手土産や!」 「手土産なんていらんのに」 「アホ!いるやろ、普通に!白石に教えてもろたんやからな」 今日、家に行くことを白石に話したら、それはもうこと細かに教えてくれた。手土産はここの店のがいいとか、金髪はアカンとか(俺の場合、地毛やなく脱色やし)、だからスプレーで黒くしてきたっちゅー話や。自分の中で一番ええと思う服を着て来た。見た目だけやったらおそらく完璧やろう。でも俺には落ち着くということなんて出来ず、昨日から緊張しまくりやった。 「ああああアカン」 「何がアカンねん」 「緊張しすぎておかしなりそうや」 「すでにおかしなってんで」 過去にこないに緊張したことがあっただろうか!あー、やばいわ。どんどん家が近づいてくる。家の前に立ったときは心臓がバックバクやった。 「ほな開けるで」 「ちょ、ちょお待って」 「なんやねん」 「深呼吸しよ」 「開けるで」 「ちょちょちょちょ待って言うたやん!開けんなって」 「もう開けた」 アホかー!コイツほんっまにドSやな!白石に洗脳されとんのちゃうか。あーあーあーあードアをガチャっとあけるまゆ。いらっしゃーい、と出て来たのはまゆによう似たお母様だった。 「こんにちはー!噂の彼氏の謙也くんやんね」 「は、はじめまして!おおおお付き合いさせてもらってます、忍足謙也です」 「どうぞー、あがって」 「あああああのこれよければ、あのつまらないもんなんすけど」 「わざわざ買うてきてくれたん?おおきに!あがってあがって」 優しくそう言うお母様にほっとした。ほっとしたのも束の間、隣でまゆが今日お父さんもおんねん、と言うもんだからさらに緊張がMAXまで戻った。 そういうことは先に言えっちゅー話や (君がうちのまゆの彼氏かね?) (は、はい!忍足謙也と申します) (ようアイツと付き合えてんな) (え?) (ドSやし腹黒やし。これからも仲良うしたってな) (はいっ!) END |