既に君の虜



「俺、ずっと前から上原さんのことが好きやねん。付き合うてくれへん?」





今、現在私にはありえないことが起こっている。目の前で少し顔を赤くして冒頭の文を言ったこの男、隣のクラスでテニス部部長で背が高くてイケメンでモテモテの白石蔵ノ介くん。そのモテモテ白石くんがなぜ私に?私と白石くんは同じクラスになったこともなければしゃべったこともない。唯一接点があるとすれば、白石くんが私と同じクラスでテニス部の千歳くんを呼ぶときぐらいやろう。廊下側の一番後ろの席の私は、呼び出し係に使われることが多い。問題児である千歳くんの保護者代わりである白石くんはよく千歳くんを呼びに来る。そのときに呼んでくれへん?と頼まれるぐらいだ。




「えっと、あの、罰ゲームか何か?」

「……上原さんは俺がそないひどい男に見えるんか」

「あ、いや、そういうわけじゃ」




しゃあないやん!誰でも疑うやろうが!人気者の白石くんに告白されれば!白石くんは本気や、と言って私を見つめてきた。えっと、あの、コイツ自分のかっこよさ知ってんな。そんな眼差しで見つめてきたら誰でもドキっとするやろ!



「俺が千歳呼んでって言うと、いつも嫌そうな顔するやん?それがおもろくて、何か気になってもうてな」

「や、それは」



それは千歳くんがかなりの確率でおらへんからや!なのに呼べって言うからめんどくさいだけじゃ!ってそうやなくて。話を戻そう。私は白石くんをどう思っているのか。もちろん嫌いなわけやない。どちらかと言うと好きの部類に入ると思う。でも、なんか信じられへんくて。だってあの白石くんやで!?こんな私に告白すると思えへんわ。



「俺は、自分から軽々しく付き合おうなんて言う男やない。ほんまに上原さんのことが好きやから言うてんねん。上原さんは俺のことどう思ってんの?」

「私は、白石くんはかっこいいと思うし、優しいってよう聞くし、好きか嫌いか言うたら好きのほうなんやろうけど、白石くんのことよく知らへんし、そんなすぐには」

「ほな、俺のこと知ってもらって、好きにさせたらええんやな」

「え?」

「自信あんで?絶対に俺のこと好きにさせたるわ」




なんやねん、それ。と思ったけど、案外すでに




好きになっちゃってたりして、

(一体あの自信は)
(どこからでてくるんやろ)





END





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