満月の夜に 秋と冬の風が入り混じった11月の夜。彼女であるまゆに呼び出された。高校に入ってからお互い忙しくて会う日が減っていたから、突然呼び出されるっていうのはなんだか久しぶりだった。 「来てくれてありがと、光」 「別に。どしたん?」 俺がそう聞くと、光の顔が見たくなって、と言った。あほやろ、なんやねんその理由。可愛いやろ。なんだか照れくさくて、でも嬉しくて、まゆの手をぎゅっと握ると冷たかった。光の手あったかいね、なんてへらっと笑うまゆに、心があったかいからやと返すと、普通逆やろとまた笑った。コイツこんな笑い方するやつやったっけ。まゆが空を見上げていたから、俺も同じように見ると綺麗な満月やった。 「綺麗やね、月」 「そうやな」 まあるい月がとても綺麗やったけど、なぜか俺には寂しく思えた。それはこの先の言葉がなんとなく想像できたから。 「ねぇ、光」 「ん?」 「別れよう」 そう言ったまゆの顔は、満月よりも綺麗で。俺はただうん、と頷いた。同じ高校でも、部活がお互いに忙しくて、クラスも違うから会うってことがなくて、寂しい思いさせてたんやろな。だけど、ごめん、なんて言葉はでてこなくて。代わりにでてきた言葉は、 「月が綺麗ですね」 繋ぎとめる言葉も知らなくて (するり、と離れた手は) (行き場所を知らない) |