紙ヒコーキ






「最悪や」





部活も引退した冬。中学最後の学年末テストが終わり、返却された数学のテストを握りしめる俺。中学最後のテストで数学が15点って。中学生なため、確実に卒業できるが、こないな点数とかおかんに怒られるわ。はぁ、と溜め息を吐くと後ろから、うわ悲惨、という声が聞こえた。上原まゆ。同じクラスでテニス部マネージャーな彼女はケラケラ笑いながら言った。




「うっさいわ。そういうお前は何点やねん」

「20点や」

「たいして変わらんやんけ」




20点と書かれたテストをヒラヒラさせながら、別に頭なんて悪くてもええやん、と言うた。いや、仮にも受験シーズンなわけで。俺は私立でもう決まっとるけど、まゆは公立志望やからあかんやろ。これからやんけ。夕日でオレンジ色に染まる教室でまゆは、私の夢に頭のよさは関係ないからええねん、と言い、ユウジの夢は何?と聞いてきた。





「は?夢?」

「そう、ユウジの夢」

「なんやろ」




夢ってなんやろ。テニスプレイヤーはちゃうし、今まではデザイナーとか書いとったけど、それっておとんがそうやから自然と俺もそうなると思ってて、自分で考える夢とは違う気がした。ほな俺の夢って、何なんやろ。




「じゃあさ、夢書いて、紙ヒコーキ作って飛ばそうや!」

「はぁ!?」




まゆは俺に選択権を与えず、ペンを渡してきた。それを受け取ると、まゆはテストの裏に真剣に書き始めた。何を書いとるんかはわからへんけど、俺もテストの裏に今思う夢を書いた。そういえばなんかの歌の歌詞にテストの裏に夢書いて紙ヒコーキで飛ばすやつあったような気がする。そう思いながら紙ヒコーキを作った。




「できた?」

「できたで」

「ほな、飛ばそう!」





そう言って俺らは屋上に向かった。屋上のドアをあけると、外はすごい寒かった。屋上から裏山に向かって、せーので飛ばした。紙ヒコーキは風に乗って、宙を舞って、ふわり、ふわり、と飛んで行った。




お互いに書いた夢なんて知らへんけど、何故か同じようなことを書いた気がして、珍しく手を繋いで帰った。







(ユウジとずっと一緒にいたい)
(まゆと一緒におりたい)





END





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