03


「繭ー」

「リナおはよ。どうしたの?」

「おはよ!今日のお昼、暇だよね?」

「え?暇って?え?いつも一緒にお昼食べてんじゃん」

「ふっ」

「え、すっごい嫌な予感しかしないんですけど」

「柳生先輩とお昼一緒に食べる約束したの」


ああ、やっぱり嫌な予感というものは的中するものなのですね!私の親友、桃谷リナちゃんは男子テニス部3年である柳生先輩のことが好きなのです。って言ってもいつもひそかに想いを寄せてるだけなのに、お昼を一緒に食べることになるとは珍しい。聞けば朝会ってそういう話になったらしい。


「ええー。すごいやだ。だって柳生先輩だけじゃないんでしょー?」

「たぶん仁王先輩もいるかな」

「えええええ。仁王先輩苦手なんだよねー。だって謎すぎるもん」

「じゃあ切原も呼んだらいいじゃん」

「ちょ、何でそこで切原の名前が出るわけ?」

「好きなんでしょ?だったら何かしら行動しないとあんなアホに伝わらないと思わない?」

「で、でも、それとこれとは、」


行けよほんとマジで親友の恋路のためだろうが、というような顔で見てくる。はぁ、もうしょうがない。仁王先輩と二人よりかは切原もいたほうがマシか。私は今日もギリギリで来た切原にお昼一緒に食べない?と精一杯に聞いた。だって、ほら、恥ずかしいし!


「は?ひ、昼?なんでいきなり」

「えと、リナが柳生先輩と食べるらしくて一緒にって…仁王先輩もいるから仁王先輩と二人はやだなーって思って」

「なんだよ」

「何」

「いや、別に(二人じゃねぇのかよ!)」


なんとか誘い終わった私は、もうこれだけでヘトヘトだ。あー、切原を誘うなんてこと今までになかったから、超体力使った。

そんなこんなお昼の時間になって、私達は屋上に行った。すでに柳生先輩と仁王先輩は座っていて、ご丁寧にこちらです、と手招きしてくれた。


「すいません、遅くなってしまって」

「構いませんよ。私達も今来たところですから」

「何じゃ。赤也も一緒だったんか。せっかく繭ちゃんと二人になれると思ったのにのう」

「誘われたから来ただけッスよ!(っつーか仁王先輩と二人になんかさせるわけねぇっしょ!)」

「では頂きましょうか」


お弁当箱をぱこっと開けていただきますをした。仁王先輩は相変わらず購買のパンを食べていて、絶対栄養偏ってると思った。そういえば切原とお弁当を食べるのは久しぶりな気がする。


「繭ちゃんの玉子焼きおいしそうやのう。ひとつくれんか?」

「え、嫌なんですけど」

「つれないのう。ここ最近、手料理なんて食べてないぜよ」

「……ひとつだけですよ」


全く、なんで私がこの人に玉子焼きをあげなきゃいけないんだ!でも仁王先輩が栄養偏ってるのも同じ選手として心配だ。仕方なしにフォークにさして渡したら、あーんしてとか言われた。うーわ、ありえない。めんどくさいと思いながらも口の前に差し出すと、横から切原が玉子焼きを食べた。


「はぁ!?切原、何してんの」

「うっせ!バッカじゃねぇの!」

「誰がバカだって?」

「赤也、ひどいぜよ」

「おおお、俺、戻る」

「はぁ!?」


何!何なわけ?いきなり怒りやがって!何も切原に迷惑なんてかけてないのに!人のことバカとか言いやがって!バカはお前だろ、バーカ!


「くくっ。可愛いのう、赤也は」

「どこがですか」



イタズラ好きな先輩と純粋な後輩

(バッカじゃねぇの!ほいほい仁王先輩にあーんとかしやがって!)
(あー、ムカツク!)



END





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