02


新学期が始まって早いもので1週間が経った。新しいクラスにも徐々に慣れ、友達も増えた。そして今は部活中。基礎練を終えた私は、顔を洗おうと水道のところまで来た。するとそこには切原の姿があった。


「何してんの」

「うわ!ビックリしたー。お前かよ」

「悪かったね、私で!」


で、何やってんの?と私が聞くと切原は、ちょっと転んだ、と言って血がたらーっと垂れている膝を見せてきた。


「転ぶとかダサっ!」

「はぁ!?お前はもうちょっと心配するとかねぇのかよ!」

「はいぃ!?何で私が心配しなきゃいけないわけ?怪我とか自分が悪いんじゃん」

「おーい、赤也ー!ばんそこ持ってきてやったぜー、って何やってんだお前ら」

「丸井先輩!聞いて下さいよー!コイツ俺が怪我したっつってんのに、ダサいって笑うんスよ?どう思います?」

「だって怪我するなんてダサくないですか?しかも部活始まってまだそんなに経ってないのに。そう思いません?丸井先輩」

「どっちもどっちじゃね?」


ほら、足出せよ、と丸井先輩は切原の足の血をティッシュで拭き、慣れた手つきで絆創膏を貼った。


「へー。丸井先輩、慣れてますね」

「まーな。弟とかがしょっちゅう外で遊んでどっか傷つくって帰ってくんだよ。だからこういうのは慣れてんの」

「お前も丸井先輩見習って、絆創膏持ってくるとかしろよな」

「何で私が!っていうか私だって財布のなかに絆創膏ぐらい入ってますー!間違っても切原なんかにはあげないけどねー!」

「はぁ!?てめぇ!」

「はいはい、ストップストップ。お前ら喧嘩ばっかしてないで少しは仲良くしろぃ」

「だって丸井先輩、コイツが」


丸井先輩は、私と切原の頭をポンポンと優しく叩いて、間に入ってくれた。丸井先輩は私と切原のヒートアップする喧嘩を優しく止めてくれる唯一の人で、お兄ちゃんみたいに私を可愛がってくれる人。


「ほら、真田が早く来いって言ってたぞ。転ぶとはたるんどる、って説教じゃね?」

「うわ、マジ最悪」

「ははっ、こってり真田先輩に絞られてくるんだねー」

「ほんっと一言余計だな、お前は」

「はいはい、戻るぞ赤也ー。じゃあな、繭。部活頑張れよー」


そう言って、ギャーギャー言う切原の腕を引っ張っていく丸井先輩は本当にお兄ちゃんのようだった。




部活中も会えば喧嘩です

(転ぶとはたるんどるぞ、赤也)
(すいません)
(聞けば余所見をしていたらしいな。集中せんとはたるんどる!)
(すいません(片倉に見とれてたとか言えるわけねぇ!))



END





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