09



ある日の放課後。

部活に行きたいのに、授業中に寝てたという理由だけで、先生に明日配るプリントまとめとけって居残りさせられた。リナは先に部活行っちゃうし、切原はだっせーとか人をバカにしやがるし!


「もー、最悪!」


なんて独り言を言ってみても、教室には誰もいないわけで。つまらない。激しくつまらない。しかもプリントまとめるとかいう地味な作業苦手だっつーの!そう思っていると、教室の後ろのドアがガタっと開いた。


「まだ残ってたのかよ」

「切原…」


そこにいたのは、切原で。お前、部活中じゃねえのかよ。


「何しに来たわけ?」

「忘れもん取りに来たんだよ」

「ふーん」


そう言った切原は、自分の席ではなく、私の席まで来た。


「何か用ですか?仁王先輩」

「ようわかったのう」


わかるだろ、普通。私を誰だと思ってんだ。切原のことが好きな奴だぞ!仁王先輩は、切原ヅラをぽんっと取ると、私の机に手をついた。


「何ですか?」

「大変そうやのう」

「そう思うなら手伝ってくださいよ」

「嫌じゃ」

「じゃあ邪魔しないでください」


仁王先輩はくくっと笑った。仁王先輩は本当に苦手だ。何考えてるかさっぱりわからない。プリントをまとめ終わった私は、仁王先輩なんて気にせず立ち上がった。


「おもしろいのう」

「何がですか」

「おまんは赤也以外の男は興味ないんじゃな」

「別にそういうわけじゃ」


じゃあ、と仁王先輩は私の腕を掴んで壁に追い込んだ。仁王先輩の顔が近い。あー、これ仁王先輩のファンだったらヤバい状況だね!


「顔色ひとつぐらい変えんしゃい」

「仁王先輩だし」

「そういうとこが面白いのう、繭ちゃんは」

「私で遊ぶのやめてくれませんか?」

「そんな繭ちゃんに良いこと教えてあげるナリ」

「何ですか?」

「今の状況、後ろから見たらキスしてるように見えるじゃき」

「え」


仁王先輩にそう言われて、仁王先輩の後ろを見てみると、そこには切原が走って行く姿が見えた。


最悪だ。


やっぱり仁王先輩は嫌い。




罠にはまった。

(切原っ!)
(邪魔して悪かったな)
(……切原)



END





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