06



「ねぇ、白石」

「何や?」

「気のせいか毎日会いに行ってさらにうざがられてる気がすんねんけど」

「そりゃお前みたいなんに毎日来られてもうっとうしいだけやっちゅー話や」

「謙也は入ってこんといてや!この脳内花畑野郎が!」

「誰が脳内花畑やねん!」

「ほな浮かれぽんち野郎じゃ、このハゲ!」

「ハゲちゃうわ!」

「はいはいはいはい。もう喧嘩せえへんの」

「ううー、白石ー。私はどないしたらええのー?」

「せや!今日、調理実習あるやん」

「だーかーらー!謙也は入って来んなっちゅーねん!しかも調理実習って今日やるやつ和食やんけ。そんなんどないして一氏くんとこまで運ぶねん」

「あ、そうか。雪。今日の調理実習何かよう思い出してみ?」

「へ?米やろ?味噌汁やろ?鮭やろ?あとー、オクラのごま和えやろ?それと、他にも何かあったっけ?」

「オクラや」

「は?」

「ユウジの好きな食べ物や」


オクラ…オクラ……ああー!そうや!そうや!そうやった!確かこの間質問しまくったときにオクラ好きや言うてたやん!※第3話参照


「それやー!先生に言うて、持って帰らせてもらお」

「でもユウジのクラスも同じ内容の調理実習やるんちゃうの?」

「謙也。それは言わんといてあげとき」

「……せやな」



その6、胃袋を掴め!



調理実習で作ったモンあげるなんてそんな手があったとは気付かへんかったわ!それにしても調理実習がオクラでよかったー。あ、ちゃうわ。和食でよかったー!そして迎えた3、4限目の調理実習。


「せんせー!オクラ好きのおばあちゃんのために、とびきりおいしいオクラのごま和えが作りたいです!そして持って帰らせてほしいです!」

「あら、一ノ瀬さん。おばあさまのためになんて、ええ心がけやね。わかったわ。特別に持って帰ること許可したるわ」

「ありがと、せんせー!」

「ほんま口だけはようまわるやっちゃな」

「ナメてもらっちゃあ困るよ、謙也くん♪」

「キモっ。音符飛ばすなや」

「うざ!」


そして私は先生とマンツーマンのもとでオクラのごま和えを愛情たーっぷりこめて作った。そりゃあもう、先生のオッケーもらうまで最高に粘ってやった!その結果が時間通り越して昼休みになってしまったぜ!私は急いで作ったオクラを持って、一氏くんがいるであろう8組に向かった。


「ひーとうーじくーん!」

「また来よった」

「嬉しいくせにー」

「嬉しないわ!」

「じゃじゃーん!今日は一氏くんのために、さきほど調理実習で作ったの持って来てん!食べて」

「今、昼飯食べたとこやで、いらん。っちゅーか毒入ってそうで怖いわ」

「失礼な!毒なんて入ってへんわ!愛情たっぷり入れたっちゅーねん!」

「余計いらんわ!お前の愛情よりも小春の愛情が欲しいんじゃ、ボケ!」

「いいから食べて」

「いらん」

「せっかく一氏くんが好きなオクラを先生に教えてもらいながら、一生懸命作ったのに。あーあ、オクラがかわいそう。堪忍な、あとでちゃんと謙也に食べてもらうからな」

「あーっ、もう!よこせ!」


そう言うと一氏くんは、オクラの入ったタッパ(先生に借りた)を私から奪った。一氏くんが単純でよかったと、私は小さくガッツポーズをした。一氏くんは箸を取り出し、オクラのタッパをあけ、オクラをひとつ口に入れた。


「どう?どう?どう?」

「ん、うまい」

「ホンマ!?やったー!」


これホンマに同じ調理実習で作ったやつか?なんて言いながら一氏くんは私が作ったオクラのごま和えを見事に完食してくれた。


「っていうか、え?一氏くんも調理実習でコレ作ったん?」

「は?当たり前やんけ。同じ家庭科の授業受けてんねんから」

「んのぉぉ!」


まさかの出来事やん!めっちゃ自慢気に渡したのに、恥ずかしー!やってもうた!でも私が少し落ち込んでたら、一氏くんは、うまかったでと言うて、私の頭にタッパを乗せた。


ようやく、ようやく



少しだけデレてくれました

(それにしてもさっき一氏くん)
(少し照れてたような)
(気のせいか)



END





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