09



わかりやすく好きな人を伝えてみてから、早いもので1週間が過ぎようとしている。一氏くんに会わない日々は何だか心に穴がポッカリ空いたみたいな感じやった。


「はぁー。一氏くんに会いたい」

「お前が大人しいとこっちが調子狂うわ」

「ちょっとトイレ行ってくるわ」

「おう」



その9、少し距離を置いてみましょう



「なぁ、白石。ホンマにアイツあれでええんか?」

「それしかないやろ。ほっといてもユウジとうまくいく可能性なんてほとんどあらへんやん」

「でも、それでもユウジは気付かんかってんやろ?せやったら今後も変わる可能性なんてないやん」

「いや、あそこまで言われたらどんなに鈍感な奴だって気付くやろ、普通」

「は?じゃあ何やねん!ユウジは気付いとんのに、気付かんフリしとるんか?」

「自分かもしれない、という可能性を持ってるだけで、それに気付きたくないねん」

「アイツの気持ちに応えられへんから?」

「どうやろな。謙也、お前ユウジが他人のそれも女子に好きな人おるかって聞いてるの見たことあるか?」

「ないけど、まさかユウジ、雪に好きな人おるかって聞いたんか?」

「ああ。そのまさかや。ユウジは自分が興味のない人に好きな人いるか、なんて聞くような奴やない」

「せやな。ほなユウジもアイツのこと気になってるってことか」

「それがこの会わない時間でもっともっと気になるはずや」

「なるほどな。それにしても、白石もお人好しやな」

「気付いとったんか?」

「なんとなく、やけど」

「俺はアイツが幸せならそれでええねん。雪が幸せになるんやったら、いくらでも協力するわ」

「ほんまお人好しやな」

「それは謙也もやろ?」

「たっだいまー。あれ?何?何?何の話?」

「男同士の秘密や」

「何それ!仲間はずれ禁止!」

「何か元気になったなぁ。何かあったん?」

「8組の前を通って補給してきた!あとな、やっぱ考えててもどうしようもないと思うねん。今の私に出来るのは、一氏くんに好きやー!というテレパシーを送りつづけることやと思うねん!」


ぐっと親指をたてて得意気に言った私を見て、謙也も白石も呆れた笑いを見せた。




会わない時間で想いは募るばかりです

(ユウくん?どないしたん?)
(いや、アイツ来おへんなって思って)
(ふうん。ユウくん、春ねぇ)
(は?今、冬やぞ小春)



END





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