07 テスト期間ってなんでこないに暇なんやろうか。部活もないからやることもないし、ブログもアップし終わったし、まゆさんは親に数学が悪すぎるからってテスト期間中の使用を禁止されとるし。あーあ、つまらん。あ、次古典やのに辞書忘れた。まゆさんに借りにいこう。 そう思って席を立ち、俺は3年の階に行った。謙也さんとかに会いにくるから3年の階には行き慣れたもんやけど、やっぱりすこし緊張する。まゆさんのいる3年8組に向かう。近くまで行くと何や騒がしい声が聞こえた。 「うわー、アカーン!また間違えた」 「計算間違いしすぎや」 「なんでなんやろ。ああ!一氏くん先に進まんといて!」 「俺より数学出来ひん奴おったんやな」 「ひどいし」 ドアから少し覗くと、一番前の席のまゆさんとその隣のユウジ先輩が小春先輩に勉強を教えてもらってるようだった。なんか、ええな。俺とまゆさんが出会ったのは去年の秋。謙也さんとまゆさんが同じクラスで隣の席やったとき。謙也さんと話してるときに一緒になって話に入ってきて、笑顔が可愛い人で素直で明るいし、好きになるのに時間はかからへんかった。 それからアドレス聞いて、メールしたり電話したり遊びに行ったりした。そして3月になって俺から告白してOKもらって付き合い始めた。付き合ってからも、部活が休みの日に遊びに行ったり、たまに一緒に帰ったりそれなりにうまく付き合っていると思う。 でもここ最近なんか様子が変なような気がする。それはユウジ先輩も同じで、二人が隣の席になってから少しずつ何かが変わってきてるようなそんな気がする。二人は一生懸命勉強してるけど、途中でふざけたりして、小春先輩に怒られて、楽しそうやった。まゆさんのあんなに楽しそうな顔は、なんだか久しぶりに見た気がする。ええな、ユウジ先輩。俺はどう頑張ってもまゆさんの隣の席にはなられへんのやから。俺が仕方なく謙也さんに辞書を借りにいこうとしたら、小春先輩に呼びとめられた。 「光くんやないの!まゆちゃんに会いに来たん?今、必死に数学やってんねん。ちょっと待ってな」 そう言って小春先輩はまゆさんを呼んでくれた。小春先輩と入れ替わりで来たまゆさんは、どうしたん?と首を傾けた。 「古典の辞書忘れて。貸してほしいねん」 「ええよー、ちょっと待ってな」 たたっとロッカーまで取りに行ったまゆさんは綺麗な辞書を俺に渡してくれた。ああ。何で俺は1年あとに生まれてきてんやろ。この辞書を渡される瞬間、教室と廊下の境目にものすごい壁がある気がした。2年と3年ってこないに違うもんなんやろか。教室の中から、まゆちゃんユウくんはもう結構すすんでんでー!なんて小春先輩が言うから、まゆさんは、一氏くんすすめたらアカンって言うたやん!と返していた。 ええな、先輩と同じクラスって。 「まゆさん」 「ん?」 「今日、一緒に帰りません?」 「ごめんなー。帰りも小春ちゃんに勉強教えてもらう約束してんねん」 「そっすか」 「それってユウジ先輩もおるんすか?」 「おれへんよー。なんで?」 「いや、なんでもないっすわ」 「そ?あ、もうすぐ休み時間終わってまうね。授業頑張ってね、光くん」 「まゆさんも頑張ってください」 2年の階に戻ったところでチャイムが鳴った。何で俺は後輩なんやろ。ついこの間までは、たかが1年の差やって思ってたのに、今はその1年の差が大きく感じる。 立ちはだかる壁が大きく見えて、 (悔しくて殴った壁) (だけど痛いのは手やなくて心だった) END |