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全国大会も準決勝まですすんだ。

あの日、まゆさんに別れを告げた。俺が出来ることはそれくらいしかあらへんから。でもどうしても全国大会だけはまゆさんに、俺を応援してほしくて。それを言うとまゆさんは、わかったと言うてくれた。けどさすがに東京までは来れへんくて、大阪から応援してくれる言うてくれた。



「よし。ほないくで」

「「勝ったモン勝ち!楽しんだモン勝ちや!」」


円陣組んで気合いを入れて、準決勝の会場に足を踏み入れる。シングルス、ダブルス、シングルスと試合がすすんでいく。次に迫る俺の試合。謙也さんとのダブルスや。せやけど、電光掲示板に表示され呼ばれた名前は謙也さんではなく千歳先輩で。変則シングルスという形で試合することになった。

手も足も出ない試合とはこのことやろう。まゆさんがここにおらんでよかったな。こないかっこ悪い姿、見せんで済んだ。それに比べ、ユウジ先輩はさっきの試合、負けてしもたけど、かっこよかったな。


結局試合はうちの負けで。青学が決勝に進出した。決勝戦を見学してから大阪に帰った。その帰りの新幹線で、まゆさんにメールを送った。負けましたと。返事はすぐに返ってきて、お疲れさまとだけあった。あーあ、ほんまに優しいな。


「財前!来年はお前と金ちゃんで優勝掴んでこい!」

「言われなくても。ユウジ先輩よりも目立って来ますわ」

「何やと!?」


もし、まゆさんがユウジ先輩を応援してたら、ユウジ先輩は勝てたかもしれないとか、そんな考えが浮かぶ。最後のワガママとか言うて、まゆさんを引きとめて、何してたんやろな、俺。


大阪に着くなり、俺はまゆさん家に向かった。電話をかけると家の前に出とってくれて、笑顔でお疲れと迎えてくれた。


「負けましたけど。手も足も出んくて」

「来年、期待してんで」



来年も俺を応援してくれるなんてこと、あるんやろうか。ああ、あるか。後輩としてやな。


「まゆさん」

「ん?」

「最後のワガママに付き合うてくれてありがとうございました」

「…うん。ごめんね、光くん」

「謝らんでええです」


俺がそう言うと、まゆさんは、ありがとうと笑った。それは今まで見たことないぐらい綺麗な笑顔やった。


「最後に一つだけ聞いてもええですか?」

「何?」

「俺と付き合ってどうでしたか?」

「光くんと付き合って、最初は光くん、かっこいいしモテるから不安やったけど、でも光くんが私を大切にしてくれたから、私、光くんの彼女でよかったって思えてん。だから、ホンマにありがとう」


それが聞けてホンマによかった。俺もまゆさんと付き合えてホンマによかった。最高の彼女やった。





(あ、せや。これ、東京のお土産です)
(何?これ?)
(ユウジ先輩の寝顔の写真)



END





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