27 終業式が終わって、次の日。午前中だけ部活の光くんと、午後に待ち合わせをした。久しぶりに光くんとデートをする。待ち合わせ場所に向かうと光くんはすでに来ていて、壁にもたれて待っていてくれた。 「ごめんね、光くん。待った?」 「今、来たとこっすわ」 「そっか。良かった。どこ行く?」 「俺、行きたい店あるんすけど、ええですか?」 光くんのことやから、CDショップやろうと思ったけど、そうではなくて。着いたのはスポーツショップやった。新しいシューズとグリップがほしいらしい。そっか。もうすぐ関西大会やもんな。 「すいません。俺の買い物に付き合わせちゃって」 「ううん。光くんがスポーツショップ行くのとか初めて見たから、新鮮やったし」 「でもつまらんかったんちゃいます?」 「全然!楽しかったで」 本当は、ユウジくんもこうやってテニスグッズを買うたりするんやろうか、と考えてたなんて言えるわけもなく、私はへらっと笑った。こんな気持ちで光くんといるなんて、最低だ。 「まゆさん」 「何?」 「寄りたいとこあるんです。着いてきてもろてええですか?」 光くんのその言葉に、私は頷いた。光くんに着いて行くこと数分、学校の近くの小さな公園に辿り着いた。ここは、光くんが私に告白してくれた場所だ。 「ここ、覚えてます?」 「告白…してくれた場所やんね?」 「そうです。覚えてくれてたんですね」 「うん」 「始まりもここなら、終わりもここのがええと思って来たんです」 「え?」 「別れましょ。まゆさん、ユウジ先輩のこと好きなんやろ?」 私は何も言えなかった。いつから私がユウジくんのこと好きやって、気付いてたんだろう。気付いてたのに、私と付き合ってくれてたんやろか。 「気付いてたん?」 「なんとなく気付いてましたけど、この前ユウジ先輩が熱で倒れたときに確信しました」 「そうやったんや」 気付いてたのに、私は光くんを好きなフリし続けて、光くんはそれに付き合うてくれてたんやと思ったら、自分の最低さに腹が立った。 「でも、最後にひとつだけ、ワガママ聞いてもろてええですか?」 「うん」 「全国大会。ユウジ先輩でなく、俺のこと応援してくれません?まゆさんに応援してほしいんです」 お願いやから、と弱々しく言う光くんを初めて見た。もしかしたら光くんは不安なのかもしれない。3年生の強豪がいるなかで、2年生の自分がレギュラーで出ることに。そう思ったら、わかったと言うことしか出来なかった。 「全国大会、光くんのことだけ応援してるから」 「…ありがとうございます」 初めて見た、あなたの弱さ (そしてその1週間後) (全国大会出場の知らせを聞いた) END |