26 すーはーと深呼吸をひとつする。まだ教室にはちらほら生徒がおって、まさかそんな人がいるなかで告白できるわけもなく、俺と上原は裏庭へと足を進めた。裏庭は久しぶりに来た。告白とかしたことないから、どうしていいかわからず、とりあえず腰を下ろし、裏山を眺めた。 「もう部活も引退して、受験シーズンやなぁ」 「せやな」 「ユウジくんは、高校どこ行くん?」 「あー、四天宝寺高校かな。謙也がそこ行く言うとったし」 「小春ちゃんは?」 「小春はもっと頭のええ学校受ける言うとった。俺は学力的に無理やって担任に言われて諦めてん」 「あー、そうなんや」 「上原は?」 「まだ決めてないねん」 そう言って苦笑いをした上原。一緒の高校やったら良かったのに、と思ったけど、それは小春みたく、自分が決めることやから、俺がどうこう言う権利はない。 「ざ、財前は来年どこ受験するんやろうな!財前が来るとこがええんちゃう?」 我ながら何を聞いてんねん、と思った。何で今から告白しようとしてる相手の彼氏の話してんねやろ…。 「あー、光くん?どうやろ。たぶん四天宝寺高校ちゃうかな?近いとこしか行かんと思うし」 「確かに。財前めんどくさがりやからな」 「うん」 アカン。こっからどう切り返せばええねん!俺はアホか!アホやろ!そう思って、よし!と意気込もうとしたら、突然後ろから声が聞こえた。 「先輩ら、こんなとこで何やっとるんです?」 「ざ、財前!」 「光くん」 「えっと、これは、その、」 「ま、頑張ってください。俺に勝ったんやから、大切にせんかったら怒りますけどね」 「は?」 「光くん」 「はい」 「ありがとう」 「ほんま、敵いませんわ。まゆさんにもユウジ先輩にも」 どうやらボールを拾いに来たらしい財前は、意味不明な言葉を残すと去って行った。そしてそのあと上原が財前と別れたと言うた。 知らなかった真実 (別れたってどういうことやねん) (振られたんだ) (は?) END |