20 「ほれ、小春も上原も戻った、戻った」 「オサムちゃん一人で大丈夫なん?」 「お前らなぁ、俺を誰やと思ってんねん。オサム大先生やぞ」 「余計に心配やわぁ」 「先生!私も一緒に看病したらアカン?」 「……しゃあないな。上原だけやで」 私はオサム先生に頼んで保健室の残らせてもらうことにした。だって心配やし、ユウジくんは私のせいじゃないって言うてくれるけど、やっぱり無理を言ってでも最後までユウジくんを傘に入れてあげればよかったって思う。私はベッドの横の椅子に座った。 「ほなオサムちゃんこっちにおるから。一氏、変な気ぃ起こしたらアカンで」 「起こさへんわ」 私がじーっとユウジくんを見ていると、ユウジくんはふいっと反対方向を向いてしまった。迷惑やったかな…。そう思っていると、上原のせいやないからという声が聞こえた。 「え?」 「ホンマにお前のせいちゃう。俺の免疫力が弱かっただけや」 「でも…」 「だから、そないに心配そうな顔せんといて」 「……うん」 顔が見えへんかったからわからんけど、たぶん照れてるんやろな。そう考えたら、何だか嬉しかった。ユウジくんの照れてるとこなんて初めて見たから、何かおかしくてクスっと笑ったら、こっちを見て、上原は笑ってるほうがいいと言った。その言葉に心臓がドキっとした。何なんやろ、最近のこの感情は。確実にユウジくんと出会ったときとは違う感情になっている。私はどうしたいんだろう。 しばらくすると、スースーと規則正しい寝息が聞こえてきた。私もベッドに肘をついてユウジくんを見ていたら、いつの間にか寝てしまっていた。その時に見た夢は光くんが離れて行ってしまう夢だった。 それが正夢になるなんて思いもしなかった (本当は自分の気持ちに) (とっくに気付いている) END |