18 お風呂あがり、髪の毛を乾かしながら今日のことを考えた。ユウジくんとの相合傘。傘を持っていないユウジくんを傘に入れてあげた。だって駅まで一緒やし、雨はやみそうになかったし、でもひょい、と私が持っていた傘を持ってくれたとことか、私が濡れないように気を遣ってくれて、ユウジくんの肩が濡れてしまったとことか、そのたびに胸がぎゅーって苦しくなって。味わったことないような気持ちになる。はぁ、と溜め息を吐いてドライヤーを切るとちょうどタイミングよく携帯が鳴った。 「もしもし」 『もしもし、まゆさん?俺やけど』 「光くん?どしたん?」 『いや、特に用はなかったけど、何してはるんやろ、って思って』 「今ちょうど髪の毛乾かし終わったとこやで」 『そうなんや』 「うん。光くんは今日何してたん?」 『今日って?』 「部活休みやったんやろ?」 『知ってたんや』 「あ、うん。小春ちゃんに聞いてん」 嘘や。小春ちゃんになんか聞いてへん。ユウジくんと帰ったからや。光くんはそんなこと気付くわけもなく、今日はCDショップに寄ったとかいろいろ話してくれた。そうやって光くんが話してくれてるにも関わらず、ユウジくん風邪ひかんかったやろか、と考える私は最低。 『まゆさん、聞いとります?』 「あ、ごめん。なんか今日眠くて」 『あー、そうやったんや。気付かんとすいません。遅刻してもらっても困るんで、早よ寝てください』 「光くんじゃないから朝起きれますー」 『はいはい。じゃあまた』 「うん。おやすみ」 ごめんな、光くん。私、嘘ついた。ほんまは眠くない。なんとなく光くんと電話する気分じゃなかっただけや。私、どうしちゃったんやろ。光くんのこと好きなはずやのに。ユウジくんのことをこないに考えてしまうなんて。私はユウジくんに風邪ひかんかった?とメールを送ると、しばらくして大丈夫やで、と返信が来た。それに安心して私は布団にもぐった。 自分の気持ちの変化に気付かないフリをした (最低なのは自分自身) END |