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じめじめする梅雨の時期。雨が続くなかで今日は朝は晴れやった。今日は晴れなんや、と傘を持たずに家を飛び出し、いつもどおり朝練をして授業を受けて、昼休みごろになると空が曇り始めた。降ってもらったら困るんやけど。俺、傘持ってへんし。でもそんな俺の願いは受け入れてくれへんかった。5限の途中でザーっと降り始めよった。


「最悪や!」

「どないした、一氏」

「雨降るなんて聞いてへんぞ!朝は晴れとったやないか!」

「そら天気も変わるやろ」

「お天気お姉さんは今日は一日雨降らん言うとったぞ!」

「天気予報なんてそう当たるもんちゃうやろ。ほら、教科書30ページ!」


最悪や、お天気お姉さんに嘘つかれるとは。信じとった俺がアホやった……ってちゃうくて!帰りまでに止みますように!と願いをこめていたら、早よ教科書読め!と先生に怒られた。ブーブーとポケットでメール受信を知らせる携帯。教科書を読んでから見てみると、白石からで、雨が止まんかったら今日は休み、との連絡やった。

傘を持ってへんから止んでほしいけど、部活が休みになるんやったら止まんでほしいとか、葛藤を繰り返すも虚しく、雨は降り続けた。


「今日は部活は休みやね」

「せやな…。小春、一緒に帰ろうや」

「今日は生徒会の仕事あんねん。堪忍な」

「俺、どうやって帰ろう」

「生徒会室に貸出用の傘が何本かあったはずやから、それ使ったらええと思うで」

「ホンマか、小春!よっしゃ、借りにいくでー!」


小春を生徒会室まで送るついでに傘を借りることにした。なんやねん、学校で傘貸してくれるんかい。生徒会室に行き、小春が取ってきてくれる、言うたから廊下で待っていると、すぐに小春が出て来た。


「小春?」

「アカンわ、ユウくん」

「どないしたんや、小春!」

「傘がないねん」

「何!?どういうこっちゃ、それは!」

「どうやら全部借りられてたみたいや」

「なにぃぃいいぃ!?」


最悪や、ほんまに。小春は堪忍な、言うて戻ってまうし、今日は生徒会が何時に終わるかわからへんらしい。仕方なく教室に戻って、外を眺めてみるが、止む気配なし。少しでも小降りになってくれれば走って帰れんのに。そう思って溜め息をひとつ吐くと、後ろからユウジくん?という声が聞こえた。


「上原…」

「何してんの?」

「いや、上原こそ、残って何やってたん?」

「委員会。ユウジくんは?」

「ああ、委員会か。俺はちょっと雨宿りというか…」


そういえば上原は美化委員やったな。上原は鞄を取りながら、傘持ってないん?と聞いて来た。うん、と頷くと、ほな入ってく?と言ってくれた。


「え、ええ!?」

「あ、えと、ユウジくんがよければなんやけど」

「あ、お、俺はありがたいけど、その、ええんか?」

「全然!だってユウジくん傘なくて困ってるんやろ?ほっとけへんやん」


たぶん今の俺の顔は赤いと思う。俺はその上原の親切を受け取ることにした。下駄箱まで行き、上原が自分の傘やろう、赤い可愛らしい傘を差した。はい、どうぞ、なんて笑顔でいう上原に心臓がバクバクやった。これっていわゆる相合傘やん。やばい、ほんまにやばい。俺は大きく深呼吸してから、上原から傘をひょい、と取った。上原が濡れないように気をつけて差しながら歩いた。





(ユウジくん、肩濡れてる…)
(あ、こ、これは)
(…ありがとう)



END





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