17 じめじめする梅雨の時期。雨が続くなかで今日は朝は晴れやった。今日は晴れなんや、と傘を持たずに家を飛び出し、いつもどおり朝練をして授業を受けて、昼休みごろになると空が曇り始めた。降ってもらったら困るんやけど。俺、傘持ってへんし。でもそんな俺の願いは受け入れてくれへんかった。5限の途中でザーっと降り始めよった。 「最悪や!」 「どないした、一氏」 「雨降るなんて聞いてへんぞ!朝は晴れとったやないか!」 「そら天気も変わるやろ」 「お天気お姉さんは今日は一日雨降らん言うとったぞ!」 「天気予報なんてそう当たるもんちゃうやろ。ほら、教科書30ページ!」 最悪や、お天気お姉さんに嘘つかれるとは。信じとった俺がアホやった……ってちゃうくて!帰りまでに止みますように!と願いをこめていたら、早よ教科書読め!と先生に怒られた。ブーブーとポケットでメール受信を知らせる携帯。教科書を読んでから見てみると、白石からで、雨が止まんかったら今日は休み、との連絡やった。 傘を持ってへんから止んでほしいけど、部活が休みになるんやったら止まんでほしいとか、葛藤を繰り返すも虚しく、雨は降り続けた。 「今日は部活は休みやね」 「せやな…。小春、一緒に帰ろうや」 「今日は生徒会の仕事あんねん。堪忍な」 「俺、どうやって帰ろう」 「生徒会室に貸出用の傘が何本かあったはずやから、それ使ったらええと思うで」 「ホンマか、小春!よっしゃ、借りにいくでー!」 小春を生徒会室まで送るついでに傘を借りることにした。なんやねん、学校で傘貸してくれるんかい。生徒会室に行き、小春が取ってきてくれる、言うたから廊下で待っていると、すぐに小春が出て来た。 「小春?」 「アカンわ、ユウくん」 「どないしたんや、小春!」 「傘がないねん」 「何!?どういうこっちゃ、それは!」 「どうやら全部借りられてたみたいや」 「なにぃぃいいぃ!?」 最悪や、ほんまに。小春は堪忍な、言うて戻ってまうし、今日は生徒会が何時に終わるかわからへんらしい。仕方なく教室に戻って、外を眺めてみるが、止む気配なし。少しでも小降りになってくれれば走って帰れんのに。そう思って溜め息をひとつ吐くと、後ろからユウジくん?という声が聞こえた。 「上原…」 「何してんの?」 「いや、上原こそ、残って何やってたん?」 「委員会。ユウジくんは?」 「ああ、委員会か。俺はちょっと雨宿りというか…」 そういえば上原は美化委員やったな。上原は鞄を取りながら、傘持ってないん?と聞いて来た。うん、と頷くと、ほな入ってく?と言ってくれた。 「え、ええ!?」 「あ、えと、ユウジくんがよければなんやけど」 「あ、お、俺はありがたいけど、その、ええんか?」 「全然!だってユウジくん傘なくて困ってるんやろ?ほっとけへんやん」 たぶん今の俺の顔は赤いと思う。俺はその上原の親切を受け取ることにした。下駄箱まで行き、上原が自分の傘やろう、赤い可愛らしい傘を差した。はい、どうぞ、なんて笑顔でいう上原に心臓がバクバクやった。これっていわゆる相合傘やん。やばい、ほんまにやばい。俺は大きく深呼吸してから、上原から傘をひょい、と取った。上原が濡れないように気をつけて差しながら歩いた。 お天気お姉さんに少し感謝した (ユウジくん、肩濡れてる…) (あ、こ、これは) (…ありがとう) END |