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「ユウジ。ユウジは上原さんが好きなん?」

「……好き、なんかな」

「そうか」



財前が部室を出て行ってから、代わりに入って来たのは白石だった。ちょっと話しよか、と言うて椅子に腰かけた。



「俺って知らん間に財前のこと傷つけてたんやな」

「財前は自分が年下なことを気にしてんねん。だから嫌やったんちゃうかな?対等に見てほしかったんやと思う」

「そりゃ遠慮するやん。俺にとっては財前は大事な後輩やねんから。でもそうやって正当な理由つけたかったんやと思う」

「何でや?」

「財前に敵わないと思ったから」

「前も財前のこと羨ましがってたなぁ」

「え?」

「小石川と部室で話してたときあったやん。堪忍な、盗み聞きしてしまってん」


俺から見た財前は、何でもできる天才。いつもかっこよくて余裕で絶対に敵わない相手。だからこそ俺はすんなり引き下がれた。財前が相手なら無理やと。でもそれが逆に財前を傷つけてた。


「財前もな、言うてたで」

「何を?」

「ユウジになりたい、って」

「え?」


一瞬聞き間違えたかと思った。あの財前が俺になりたい?なんでや。財前のままでええやんけ。


「おもしろいし、誰からも好かれてるからやって」

「………」

「なぁ、ユウジ。ユウジにはユウジのええとこがある。それは財前にしても同じや。ならそのええとこ活かさなあかんと思わへん?」

「ええとこを活かす?」

「ユウジのええとこは、お笑いに一生懸命なとこ、人を笑顔にしたいと思ってるとこ、自分の好きなことには一直線に突っ走るとこや。せやろ?」


白石は、俺のええとこも財前のええとこも知ってる。だからこそ言えることなんやろうな。俺は白石の言葉にうん、と頷いた。


「ほんなら今、ユウジがするべきことはわかるな?」

「財前を笑わすこと、上原が好きや、と真剣に伝えること」

「そうや。今、小春が財前を発見したってメール来たわ。お前の小春レーダーならどこか聞かんでもわかるやろ?」

「白石、おおきに」


俺が立ち上がりそう言うと白石はにこっと笑った。だから白石は部長なんやろな。こんなに人のことを思える人になりたい。





(俺の小春レーダーによると)
(こっちや!)



END

2011.12.8 ちょこ





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