14 「ユウジ。ユウジは上原さんが好きなん?」 「……好き、なんかな」 「そうか」 財前が部室を出て行ってから、代わりに入って来たのは白石だった。ちょっと話しよか、と言うて椅子に腰かけた。 「俺って知らん間に財前のこと傷つけてたんやな」 「財前は自分が年下なことを気にしてんねん。だから嫌やったんちゃうかな?対等に見てほしかったんやと思う」 「そりゃ遠慮するやん。俺にとっては財前は大事な後輩やねんから。でもそうやって正当な理由つけたかったんやと思う」 「何でや?」 「財前に敵わないと思ったから」 「前も財前のこと羨ましがってたなぁ」 「え?」 「小石川と部室で話してたときあったやん。堪忍な、盗み聞きしてしまってん」 俺から見た財前は、何でもできる天才。いつもかっこよくて余裕で絶対に敵わない相手。だからこそ俺はすんなり引き下がれた。財前が相手なら無理やと。でもそれが逆に財前を傷つけてた。 「財前もな、言うてたで」 「何を?」 「ユウジになりたい、って」 「え?」 一瞬聞き間違えたかと思った。あの財前が俺になりたい?なんでや。財前のままでええやんけ。 「おもしろいし、誰からも好かれてるからやって」 「………」 「なぁ、ユウジ。ユウジにはユウジのええとこがある。それは財前にしても同じや。ならそのええとこ活かさなあかんと思わへん?」 「ええとこを活かす?」 「ユウジのええとこは、お笑いに一生懸命なとこ、人を笑顔にしたいと思ってるとこ、自分の好きなことには一直線に突っ走るとこや。せやろ?」 白石は、俺のええとこも財前のええとこも知ってる。だからこそ言えることなんやろうな。俺は白石の言葉にうん、と頷いた。 「ほんなら今、ユウジがするべきことはわかるな?」 「財前を笑わすこと、上原が好きや、と真剣に伝えること」 「そうや。今、小春が財前を発見したってメール来たわ。お前の小春レーダーならどこか聞かんでもわかるやろ?」 「白石、おおきに」 俺が立ち上がりそう言うと白石はにこっと笑った。だから白石は部長なんやろな。こんなに人のことを思える人になりたい。 真っ直ぐ立ち向かう、もう逃げない (俺の小春レーダーによると) (こっちや!) END 2011.12.8 ちょこ |