13 上原と話をしてから、戻ったのは6限が始まってすぐだった。俺、勢い余って俺が守るとか言うたけど、迷惑やなかったろうか。でも、それよりも驚いたのは、ユウジくんって呼んでいい?って聞かれたときやった。アカン。思い出すだけで心臓がバクバクや。 「ホンマ言い訳するのも大変やったんやで」 「ホンマすまん!ありがとう小春」 「んもう!でもまゆちゃんと話出来てよかったなぁ」 「うん」 「なんやの、浮かない顔して」 「いや、なんもあらへん」 そりゃあ上原と話を出来たのは良かった。上原が悩んでたこと聞けてよかったし力になれて良かった。でも、何やろ。あれでよかったんやろか。財前とうまくいってくれるだろうか。小春と一緒に部室に行くと、財前がおった。俺と小春が着替え始めようとすると、いきなり小春が忘れ物したと教室まで取りに戻った。部室には俺と財前の二人きり。 「財前早いなぁ」 「掃除早よう終わったんすわ」 「そうか」 「ユウジ先輩。腹痛大丈夫っすか?」 「腹痛?」 腹痛ってなんのことや?俺、腹痛なんて言うたっけ?ん?小春が確か5限俺がいなかった理由を腹痛にしとったなぁ。 「あ、ああ!もう大丈夫やで!バッチリ絶好調や!」 「そっすか」 素っ気なく答えた財前は俺を睨んだ。なんやねん、と聞くと、別にと言った。別に、やないやろ。何かあるんやろ。俺がまた聞くと、財前はユウジ先輩は卑怯っすね、と言うた。 「は?俺が卑怯?」 「俺が一つ下やからってバレへんのをいいことに人の彼女と浮気っすか?」 「浮気!?俺が誰と浮気すんねん!俺は小春だけや」 「はぁ。もうそのネタええですわ。飽きました」 「なんやと!?」 「俺は会えへん時間が多いのにユウジ先輩は毎日会えますもんね。その間に奪おうって思ってるんでしょ?卑怯やないですか」 「俺が奪うわけないやろ!別に上原のことは好きちゃう。友達や」 「アンタみたいな女苦手な人がどうしてまゆさんとは仲良う出来てるのかようやく気付きましたわ。好きだからやろ?」 アカン。財前は完全に気がついてる。確信をついてる。俺はどないしたらええん?このまま否定し続けるか?でももしかしたらそれは財前を傷つけてるのかもしれへん。いつか小春が言うとった。正々堂々勝負しろって。 「好きや、言うたらどないするん?」 「別にどうもせえへん。でもアンタは引くんやろ?自分が好きやと気付いた時点でアンタはそこから手を引くねん。俺に遠慮してな」 「………」 「だったらそのまま遠慮してください。俺は絶対にまゆさんを譲りませんから」 財前は俺の性格を知ってんねんな。可愛い後輩である財前の為を思って手を引くのはアカンことなんやろか。誰もいなくなった部室で一人頭を抱えた。 人の為ではなく、自分の為だった (ユウジ。ちょっと話しよか) (白石。なんやねん) |