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一氏くんがかばってくれた。昼休みに私のことを呼びだした2年の子たちに向かって怒ってくれた。どうして一氏くんはこんな私に優しくしてくれるんやろ。



「一氏くん」

「何?」

「話聞いてくれへん?」

「ええよ」



私と一氏くんは、5限を受けずにそのまま裏庭の芝生に腰かけた。



「さっきの全部聞いてた?」

「うん。お前がふらっと裏庭行くんが見えたから、何かおかしいな思って来たら囲まれとった」

「そっか。さっきの子たち、ほんまに光くんのことが好きなんやね」

「でも、それはお前もやろ?」



一氏くんにそう聞かれ私は、どうだろ、と苦笑いした。さっきの子が、私が光くんを大切にしてるように思えないと言っていたのはたぶん本当のことだと思う。



「私が光くんのことを大切にしてるように見えへんっていうのはホンマのことやと思う」

「は?」

「自分でも、光くんに何もしてあげれてないっていうのは自覚してんねん」

「……そうか」

「光くんはきっと私を大切としてくれてる。でも、私はそれに応えてあげれてたんかな、って思うねん」



思い返せば、光くんが部活を見に来なくていいって言ったのは、きっと他のファンの子に何か言われるから。あまり一緒に帰らないのも同じ理由。光くんは、私のことを思って行動してくれていた。だけど私は、それを不満に思ったりして、光くんの気持ちをわかってあげられなかった。



「私と光くんってどっちが年上だかわからへんな」

「それは別に今からでも遅くないんちゃう?」

「へ?」

「財前は、お前に負担かけさせたくなかったから言わなかっただけちゃう?」

「そうかなぁ?」

「財前は上原が大切やねん。だから、何も言わずに守ろうとしとったんちゃうかな?財前はたぶん年下って思われるのが嫌やから、かっこつけたかったんだと思う」

「一氏くんって光くんのことようわかってんやね」



一氏くんは少し照れながらそんなことないわ、と言うた。何か一氏くんには、何でも話せてしまう。なんでやろ。



「お前やってちゃんと財前のこと大切に思ってるやん。財前のこと好きなんやろ?」

「うん」

「だったらそれだけでええやん。それだけで財前は、嬉しいと思うで」



そうやって笑いながら言ってくれた一氏くんに、なぜだか胸の奥がぎゅーって苦しくなった。






(一氏くん)
(ん?)
(ユウジくんって呼んでいい?)
(は?あ、え、ええ!?)
(ダメ?)
(えっ、ええけど)



END





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