08


「あれ?財前やないか。何しとるん?」

「部長……」



まゆさんに帰りを断られて、素直に家に帰って勉強するのも癪やったから、学校帰りにCDショップに立ち寄った。適当にブラブラしてCDショップを出たところで、部長と偶然に会ってしまった。最悪や。変なのに捕まった。



「テスト期間やろ。家に真っ直ぐ帰って勉強せなあかんで。何のためにテスト期間に部活がないと思ってるん?」

「はいはい」

「何不貞腐れてるん?」

「別に不貞腐れてなんかいませんよ」

「上原さんか?」

「知ってんすか?」

「小春と勉強しとったから少し教えるの手伝うてたんや。そしたら財前に一緒に帰ろうと誘われたけど断った言うとったから」

「そっすか」



部長はちょっとしゃべっていかへん?とか言うてファーストフード店を指差した。テスト期間中やから真っ直ぐ帰れ言うたん誰やねん。部長が奢るからとか言うたから素直に奢られることにした。



「財前、何か悩みあるんやろ?」

「別にないですけど」

「あるやろ。俺の目はごまかせへんで」


ほんとこの人って無駄嫌いなはずやのに、無駄に人のことわかりすぎやろ。俺は一言、1年早く生まれたかったと言った。



「それは上原さんと同い年になれるから?」

「今日、まゆさんに辞書借りに行ったんです。そん時に学年があがって初めてまゆさんが教室におるとこ見たんすけど、何か俺の知らないまゆさんがおるみたいで悔しかった」

「そうか」

「隣の席のユウジ先輩がうらやましくて。俺はどう頑張ってもまゆさんと一緒に授業は受けれへんし、隣の席にもなれへんし、勉強を教えることもできひん」

「そうやな」

「俺、ユウジ先輩になりたい」

「ユウジに?」

「誰からも好かれとるやないですか。モノマネライブとか開催するぐらいおもろいし、なんだかんだ優しいし、手先も器用やし。それに比べ俺には何もないですから」

「そんなことないで、財前」

「え?」

「財前にだってええとこいっぱいあるやん」



どこが、と聞くと部長は、そういうとこと言うた。どういうとこやねん。



「財前は人のええとこ見つけられるやん。そういうのええとこやと思うで。それに財前だって優しいし、人気あるやん」

「別に優しくなんかないですよ。人気あるって言ったって寄ってくるのは女だけ。所詮顔だけってことでしょ。友達だって全然おらんし」

「そう悲観的になったらアカン。ええか?財前。人間はな、つい自分と他人を比べて、自分にはないものを持ってるとそれが羨ましく感じるんや。でもな、それは逆にしてもそうなんやで?財前には財前にしかないモンいっぱい持ってんねん。だから上原さんも財前のこと好きになったんちゃう?」



なんでこの人は、人のことをこないに考えることができるんやろ。部長は、だから財前は財前なりに頑張ればええねん。と言うて笑った。俺もなれるやろか、この人みたいな部長に。






(俺も年上と付き合ったことあんで)
(え、そうなんすか?)
(3日で別れたけどな)
(説得力ないやん)



END





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