花月はこう思っていた。
 結城は自分とキス以上のことをする気などないんだ。自分はまだ子どもで、欲情などしてはくれない。だから、牛のパジャマが嫌だった。あえて子供っぽい格好をしたくはなかった。

 しかし、目の前にいる結城の目は、情欲に濡れてギラギラとしている。それが、嬉しかった。普段の感情の読めない能面じゃない。今、自分に抑えきれないほどの興奮をしてくれているんだと実感できたから。


「……いれて?」


 次に驚くのは結城の番だった。苛立ち? そんなものはどこかへ飛んで行った。花月は分かった上で誘っている。結城の目を見つめて、恍惚とした表情をしている。
 花月と想いを通じ合わせてから、一年。少なくとも結城は、性行為をしなくても特別不満という訳ではなかった。できることならもちろんしたいが、花月が望まないならずっとしなくてもいい。ただ、我慢しなければならない瞬間もあるから、辛い時もあるというだけ。

 それに、とにかく大事にしたかった。お互い男なのに、必然的に女の扱いをされることを花月は嫌がるだろう。だから決定的な行為はしないでいよう。そう考えていた。
 なのに、どうだ。花月はうっとりした表情で、今確かに『挿れて』と言った。

 結城はグッと眉間に皺を寄せた何かを我慢するような顔で、スーツを乱暴に脱ぎ捨て、性急な動きで花月に口付けた。とめどなく溢れる花月への気持ちを懸命に押し留めているように思わせる苦しそうな表情をしている。


「……んぅ、は……っ」


 結城の熱のこもったキスに翻弄されながらも、広い背中に回った手は力強く結城を捕えていて、たまに合わせる視線でも『もっと。もっと』と訴える花月。
 そんな花月のパジャマのボタンに自然と手がかかり、結城は器用に意識させる間もなくスルスルと脱がしていく。


「あっ……!」


 さっきまでキスをしていたはずなのに、いつの間にか結城の舌は乳首を這っていた。ビクンと震える身体、思わず漏れた声に花月は驚く。もの凄い羞恥に両手で顔を隠して、口を塞いだ。


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