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「んー!!」
俺は先生の胸元を押して、キスをされるようになって初めて抵抗らしい抵抗をした。先生が離れると同時に、俺は立ち上がって学習机から距離を取った。
「……こういうことすんの、やめろよ」
腹が立っていた。彼女なのか奥さんなのかは知らないけど、とにかく、美奈子って女がいるくせに何で俺にキスなんかすんだよ? 高校生のガキ捕まえて、からかってんのかよ!
「クソ……!」
制服の袖で唇を拭おうとして、急に泣きたくなんかないのに涙が出そうになった。震える口元を隠したくて、そのまま袖で隠す。
いよいよ涙が抑え切れなくなった俺は、先生に背中を向けた。
何を1人で盛り上がってんだよ? と、先生に思われているだろう。今日は最低の誕生日だ。
「……どうして、泣くんですか? ……そんなに嫌でしたか、僕にキスされるのは」
先生の声が少し不安げな気がした。俺は泣き止むのに精一杯で、何も答えられない。
「……答えて下さい」
先生にそう言われても、俺は首を横に振ることしかできない。
少しの間があって、先生が立ち上がる気配がしたと思ったら、背中に衝撃を受けた。バランスを取れなくなった俺は目の前のベッドに倒れ込んだ。
「答えて下さい。僕にキスをされるのが嫌で泣いているんですか」
倒れた俺の身体を仰向けにして、俺の上に馬乗りして聞いてくる先生。怒ってるみたいで、怖い。俺はまた首を横に振った。
「……嫌ではない?」
今度は首を縦に振る。先生にキスをされるのは嫌じゃない。嫌だと思ってたけど、望んでる俺もいる。
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