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5時55分、先生が家に来た。いつも通りの5分前行動。頭が下がります。
「純くん、今日はすみませんでした」
俺の部屋の学習机に並んで座ったところで、先生が真剣な表情で謝ってくれた。忘れていた寂しさをまた思い出す。
「いーよ。それに今日はお母さんが俺の好物たくさん作ってくれてるんだ! 先生もこのあと食べて行かない?」
「はい。是非」
いつものように柔らかく笑う先生。やっぱ格好いいよな、チクショー!
雑談は早々に切り上げて、勉強を始める。何てったって受験生だから。センター試験が俺を待っている!
「うん、満点。数学は本当によく出来るようになってきましたね」
「先生が教えてくれると分かりやすいからだよ」
「すみません。英語や古典なんかももっと上手く教えられたらいいんですけど」
「英語も成績上がってんだよ? 学校の先生が志望校のランク上げてもいいって言ってたし! だから、気にすることねぇって! ありがとね、先生」
ニヘラっと笑う俺。『格好いい』には程遠い笑顔だ。
すると突然、先生が俺の後頭部をホールドした。身動きが取りづらくなって慌ててしまう。
「え、ちょ、なに?」
「……黙って」
「ん……っ!」
いつもとは違う荒々しいキス。でも気持ち良くて、流されそうになった頭に、ふと蘇る声。
『美奈子』
先生の、声。
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