「先生はさ、俺のカテキョ付く日以外は何してる人?」


 前々から、少し興味があったこと。20代後半くらいだろう男性の仕事が週1の家庭教師だけなはずがない。


「塾の講師をしています。高校数学のね」

「数学だけ?」

「はい。数学の教員免許を持っているので」

「じゃあ教師目指してるってこと?」

「まぁ、そうですね」

「じゃあさ、家族は? 兄弟とかいる?」

「弟が1人」

「へぇ〜! 俺と一緒だね。どんな人? いくつ?」

「今年22だったかな。真面目で、頭の良い奴なんですが、最近はどうやら夜遊びに夢中みたいで」

「真面目なのに夜遊びって、変な感じ。まあ、俺の弟も同じかも。子供の頃から素直で優しい奴なんだけど、朝帰りの日とか……ケガして帰ってくることがあるんだ。」

「それは心配ですね」

「イジメられてんのかなって思ったこともあるんだけど、そんなんじゃなくて……本人は楽しそうなんだよね」

「案外、弟たちが一緒に遊んでいたりして」

「まっさかー! あ、そだ。先生はいくつなの?」

「25です」

「ふ〜ん。じゃあ……」


 俺は沈黙になるのが恐くて、というか気まずくなりたくなくて、先生を質問攻めした。先生はずっといつものように柔らかく笑った表情のまま答えてくれていた。
 こんな質問をするまでは……。


「先生ってさ、彼女いる?」


 ふっとなくなる表情。そして、少しの間のあと浮かぶ自嘲的な笑み。


「さて、どうですかね?」


 それ以上聞くことができなくて、恐れていた気まずい沈黙が訪れてしまった。


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