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でかい会社じゃあなかったですがねぃ、俺でも何とか職にはありつけやした。狭いアパートでも、なんとか自分と女が食っていける分くらいには稼げるようになった頃のことでさぁ。
玄関の扉を開けるとね、電気が付いてねぇんです。でけぇ腹して俺を迎えてくれる笑顔もなかった。
あったのは……血だらけになって腹抱えて倒れてるあいつ。……殺されたんでさ……もちろん、ガキも助からなかった。
……俺のせいなんでさぁ。
中途半端に足を突っ込んだのはタチの悪ぃヤクザもんで、組の失態を俺のせいに仕立て上げようとしたみたいでね。
家にいなかった俺の居場所を言わねぇあいつは殺された。そいつも切羽詰まってたんでしょう。すぐに組に殺され、結局はその組も潰されやした。
俺ぁ、怒りや憎しみをぶつけるもんが自分しか残らなかったんでさぁ。
……死んでやろうと思いやしてね、その組を壊滅させた組に乗り込みやした。
逆恨みもいいとこですかねぇ。
乗り込んだ組ってぇのが、五代目野田組でさぁ。以前のリンさんのように、いきなり本家の門をくぐってやりやした。
「マジすか!」
「えぇ。俺も若かったんでさぁ」
その時、兄貴と出会いやした。
当時、五代目野田組の若頭だった若のお父上でさぁ。
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