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翌朝、リンは早い時間に目を覚まし、狼が起きるまでにさっと身支度を整えた。
リンのために用意された布団でぐっすりと眠っている狼。すぐ隣に自分のベッドがあるというのに、必ずリンの布団に入ってくるのだ。
おかげでリンは、狼が寝るまでコンタクトが外せず、また狼が起きる前にコンタクトを入れて、一旦専用のシャンプーでヘアスプレーを落として乾かし、またヘアスプレーを吹き付けるという何とも慌ただしい朝になるのである。
「寝付きが良くて、寝起きの悪い奴で助かるぜ。ほんと」
眠っている狼の頬をつつくリン。それを心底うっとうしいという顔をしながらも眠り続ける狼。
「……今起こしたら俺に対してでもキレんのかな」
自分に対してキレる狼に少し興味が沸いたリンだった。
出会ったばかりの頃はリンに対しても傍若無人ぶりを見せていた狼。声をかけた途端に殴りかかられたのは記憶に新しい。
そんな狼が、今では抱き付いてきて眠るのだ。それも心から可愛いと思っているが、出会った当初の狼もとても気に入っていた。
起こしてみよう、と妙な冒険心に駆られた。
「おい、起きろ! 朝だぞっ」
狼の肩を揺さぶる。
さぁ、どんなキレ方をするんだ? と内心ワクワクしながら、狼を見つめる。
すると、眉間に深く皺が寄り、うっすらと目が開いた。目が合ったと思った瞬間に狼の手が素早くリンの腕を掴み、そのまま引っ張られる。
「うぉっ!」
そして、ギューッと抱きしめられるリン。どんな表情をして、どんな暴言を吐くのかと期待していたリンに対して、狼が発した第一声はこうだった。
「朝、リンに起こされるとか……すげーテンション上がる……」
顔はだらしない二ヤケ面。そんなお前もいいんだけどよ……と、正直に言ってガッカリしたリンだった。
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