私立宝生学園高等部の寮内。
 宝生学園もゆとり教育の賜物か、土日は授業が無い。おまけに申請さえすれば外泊も許可されるので、家業を手伝う者、遊びに出る者など様々である。特に何もすることが無い鈴音は、狼の部屋で、狼と2人のんびりと過ごしていた。

 そんな時、鈴音はふと以前から気になっていたことを聞いてみようと思い立った。


「なぁタロ、清次さんの奥さんってどんな人?」

「……知んない。つか清次って結婚してんの?」

「結婚指輪みたいのしてんじゃん。左手の薬指に」

「そうだっけ?」


 本気で知らないという様子の狼に呆れる鈴音。


「じゃあ、清次さんの家ってどこ?」

「知んない。興味ないもん。俺が実家に帰る時にはいるし、うちじゃないの?」

「お前……なんも知らねぇのな」

「そうだね。……あ、でも決まって出て行く日があるよ。まぁ、そんな長時間出てる訳じゃないけど」

「いつ?」

「25日」

「明日じゃん」

「そーいや、そだね」

「……よし! 尾行すんぞ」


 楽しいことを思い付いたという顔をしている鈴音。笑顔がキラキラと輝いているようだ。
 狼としては、鈴音と一緒にいられるなら何でもいい。楽しそうに笑ってくれるなら尚いいということで、その提案に賛成した。
 そして、翌日に備え、今日から狼の実家に泊まることにした。


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