「昨日、俺が出てから花月はどうしとった」


 山下がビクついて目を泳がせとるそのめんどい感じにも腹が立つ。何なら一緒について来た風見にも腹が立つ。お前はお前の仕事をしとけやボケが。


「昨日は、友達と遊びに行くと言われてました。近くの駅まで車で送って欲しいと言われたのでお送りして、それだけです」

「遊びにて、どこへや」

「聞いてません」

「……GPSは」

「すぐ確認します!」


 鞄からタブレットを取り出して花月の現在地を調べる山下を心配そうに見ながら、風見が口を開いた。


「花月さんに何かあったんですか?」


 俺はその質問に応えへんかった。


「昨晩はどちらでお休みになられたんですか? その様子では、花月さんに昨日からお会いになっていないということですよね」

「昨日はうちに帰ったんや」

「ご実家に? 珍しいこともあるものですね。花月さんが事務所に住まわれてからは……ああ、なるほど。ようやく事情が飲み込めました。花月さんから外泊すると言われたんでしょう。だからあなたは会社から距離のある事務所まで戻らずに、ご実家に帰られた。そして、花月さんの居場所を知りたがる理由は、外泊すると言われた先が美波くんの所だったからですね」


 応えへんかったのに、鳴海に全部言い当てられた。


「美波くんは私といましたからね。さて、花月さんは誰と遊んで、どこに泊まったんでしょうかね」

「…………」


 せやから今それを知ろうとしとるんやろうが。鬱陶しいんじゃ、その顔が!


「……組長。花月さんのGPS、全部事務所を指してます」

「ああ? 携帯もか」

「携帯GPSは位置を測定できません」


 そういやさっき留守電になったな。電源切ってんのか、電池が切れたか。


「あれだけ仕込んだGPSを全て持たずに出掛けるなんて、わざととしか思えませんね」

「たまたまちゃいますか。中には仕込んでないもんも……」

「確かにあるけどな。あいつの鞄には全部仕込んである。いつやったか、連れ去られてからは靴にも仕込んだ」


 つまり、わざとや。俺に居場所を知られへんようにして、出掛けたんや。


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