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見合いっちゅうもんは総じてくだらん。周りの人間が盛り上がるだけで、当の本人は嫌々来てやっとるだけ。まあ今回に限っては、じじいの顔を立てて、それなりの態度で挑んでやるけどな。
誰が指定したんか分からんけど、片道9時間もかけて関東のホテルにまで来てやった時点で、俺にしては譲歩しまくっとると自分で思う。
こういうホテルに連れて来たら、花月はきっとオドオドしながら俺にくっ付いて歩くんやろうな、と思ったら笑えた。いきなり鼻で笑った俺に、護衛のためについて来た周りのもんがビビっとる気配がする。
鳴海に言われた通り、一旦ロビーのラウンジに向かう。おそらく、野田の人間とそこで落ち合うことになっとるんやろう。
明らかに堅気やない雰囲気の集団を見つけた。あの顔触れは……侠心会か?
「……何で清次さんが来とんねん。じじいは?」
「馬鹿野郎おめぇ、組長が直々に付き添ってやるわけねぇだろぃ。兄貴の俺で我慢しやがれ」
「清次さんなんが不満なんちゃう。あのクソじじいの頼みやからわざわざ関東にまでこの俺が出向いてやっとんのに、連絡も寄越さん上に顔も出さんってどういうこっちゃ言うとんや」
「何でぃ。そういうことなら組長から伝言預かってるぜぃ」
「……伝言?」
「相手さんにもう一度会いたいと思わせろ、とさ」
「はぁ? 相手の女にか?」
「組長からおめぇのシャツとネクタイを買って行くように言われたから、女受けしそうなやつ選んできてやったぜぃ」
手渡されたもの見て絶句する。ピンクのステッチが入ったシャツに、黄色のネクタイとチャラチャラしたデザインのネクタイピン……。どんな顔してこれを身に付けろっちゅうんじゃボケカス!
「髪型もセットし直せよ。爽やかな感じにな!」
爽やかと俺を結び付けれるか。無理やろ。俺がどう足掻いても爽やかにはならんやろ。なりたないけどな! これっぽっちも!
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