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1時を15分ほど過ぎた頃、幸介が生徒会室に現れた。
「遅いぞ、幸介。どうせなら急いで来た素振りくらい見せろ」
「ごめんね、圭ちゃんっ。遅れちゃったぁ〜」
「……!?」
言葉が出なくなるほど驚く役員4人。特に『圭ちゃん』と呼ばれた圭吾の驚きはそれはそれは大きなものだった。
「……な、なんだって?」
「ほら、早く会議始めようよっ」
昨日までの幸介からは想像もできない言動。そして幸介とは思えないほどニコニコと笑っている顔。
太一の机の隣にある自分の席に座って、会議内容を書き留めるノートを取り出す。
「うん? みんなどうしたの? 早くしようよっ」
『どうしたの?』はこっちのセリフだと、全員が思ったが、誰1人そうは言えなかった。
幸介の様子には、なんとなくツッコむことはできないまま、翌日に控えた新役員選挙についての会議は進行し、終了した。
「終わったねぇ。遅刻したお詫びに僕が紅茶とお菓子、用意するねっ」
給湯室へ小走りで行く幸介。その姿が見えなくなると、4人はバッと顔を見合わせた。そして、机から立ち上がり、コの字型に置かれたソファへと素早く移動する。
「幸介の奴、どうしたんだ?」
「頭でも打ったのでしょうか?」
「あ、それで遅刻を?」
「……」
太一は何も言えなかった。昨晩のことが原因かもしれないと頭を悩ませていた。
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