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 もう、見るのはやめよう……。本気で拒否反応が起こってる。桜井圭吾という人物像がガラガラと音を立てて崩れていくようだった。
 宗の弟は、大人しいなあ。うん、宗の弟って感じ。なんか、よかった。

 見ないようにと思っても意識がそちらにどうしても向いてしまう。太一は自身の作業机で書類の整理をしながら、給湯室から出てきた宗一郎がコーヒーとジュースを圭吾たちの前に置くのを視界の端に捉えていた。


「どうぞ」

「ああ。光、宗ちゃんに『ありがとう』は?」

「ありがと〜! そーちゃんっ」

「どういたしまして」


 なんだ、あのほのぼのした感じは? あんなにニコニコ笑ってる圭吾と宗は見たことがない。

 太一は立ち上がった。
 その場の空気をもう吸っていられなかった。幸介も一緒に出ないかと言おうとして、幸介を見た太一は固まった。

 幸介が、今にも泣き出しそうな表情をしていたからである。


「……こ……うすけ?」


 太一の声でハッとする幸介。少し慌てたように立ち上がった。


「圭吾、この書類見ておいてくれ」

「あぁ。分かった」


 数枚の書類を圭吾の机に置く。一度だけ圭吾達の方へ顔を向けたが、すぐに太一に向き直った。


「行くぞ」

「あ、うん」


 太一は幸介の後ろについて生徒会室から出た。

 中等部寮まで歩いて帰る間、2人は一言も喋らなかった。喋ることならいくらでもある。圭吾の様子だけでも数十分は話せそうだ。
 しかし、幸介の様子が話しかけることを躊躇わせていた。


「じゃーな」


 結局、部屋の前まで話すことがなかった2人。向かい合わせの部屋にそれぞれ入って行った。


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