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「おぅ、太一。茶ぁ」

「幸介くん? 俺は幸介の執事じゃないよ?」

「だってよー、お前が煎れた茶が一番美味いんだもん。美味い茶を煎れるお前が悪い」

「わかったよ」


 もうすぐ俺たちは高校生になる。といっても中等部から高等部に持ち上がりだから、何も変わらないんだけれど。


「はい、おまたせしました」

「サンキュ!」


 そうやって笑った顔が好きだから、笑った顔を見せてくれるなら、俺なんだってするよ。


「なぁ、太一。圭吾か宗一郎知らね? 書類見てほしいんだよな」

「あぁ、2人なら弟たちを迎えに行くってさ」

「弟?」

「今日ここに遊びに来るんだって。まだ幼稚舎にも入ってないチビっ子たちらしいけど」

「へぇー。それはそれは……。桜井の家は学園規則まで曲げられるってか」


 部外者が学園内に入ることは許されていない。特別な行事の時以外はたとえ家族であっても入ってはいけない決まりだ。それを曲げさせる程の権力を持っているのが、日本屈指の大財閥、桜井家である。

 しばらくすると、生徒会室にチビっ子2人を連れた、圭吾と宗一郎が入ってきた。


「光、ここが兄ちゃん達がお仕事してるお部屋だぞー」

「!!?」


 思わず圭吾から目を逸らし、お互いに『今のは何だ?』という視線を交わらせる幸介と太一。

『兄ちゃん』?
『お部屋だぞー』?

 幸介と太一はそんな圭吾を受け入れることはできない。小さな弟を抱っこしながら、ソファに腰掛ける圭吾を直視できないでいた。


「なんだ……アレ……?」

「言っちゃ悪いけどさ……、気持ち悪い」

「おぅ。マジ気持ち悪ぃ……」


 小声で話す2人。
 キャッキャと戯れている圭吾とその弟から目を背けたいのに、見てしまう。


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