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あれは私がまだ小学生の頃、とある日曜の夜だった。執事長である父に定期報告をするため、父の書斎へ行った時だった。
「奥様が懐妊なされた。まだ性別は分からないが、うちも子を作ることになるかもしれん。念頭に置いておけ」
また虚しい存在が生まれるかもしれないのだと思った。
「分かりました」
「学校でおかしなことはないか?」
「先日、圭吾様が親衛隊を公認なさったので、おかしな騒ぎは収まりました。代わりに集会とやらに参加しなくてはならなくなりましたが、ある程度は監視できるようになったと圭吾様も納得なさっております」
「親衛隊か……あの学園にはやっかいなものがあるものだな」
「桜井家のご子息であの優秀さに加え、あの外見。親衛隊ができるのも仕方がないでしょう。しかしデメリットばかりでもありません」
「宗一郎、圭吾様がそのような対象として見られるようになったのだ。これまで以上に注意して過ごせ」
「はい。片時も圭吾様から離れはしません」
「よし。……もう自室に帰っていい」
「はい、失礼します」
父と話すのはいつも緊張した。親子というより上司と部下のような関係だったからだ。会話はいつも桜井家の方々のことばかりで、自分自身のことを話したことはほとんどなかっただろうと思う。
自室に戻ってほっと一息つく間も無く、圭吾様に呼び出された。
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