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「はじめまして。あっしは未来の若頭補佐、清次でさぁ」


 未来の若頭、それは言うまでもなく狼のことである。現在、野田組の若頭はいない。


「はじめまして。リンといいます」

「おぅ、清次。リンさんの分も晩飯用意するように言ってこい」

「へい!」

「あと狼にここに来るようにと」

「若なら先ほど学校から呼び出しくらったってんで、出て行っちまいやした」

「……そうか。残念じゃ。すまんのぅ、リンさん」

「いえ。そういうことでしたら組長のお話だけ聞いてお暇させて頂きますよ」

「いやいやぁ! 是非ご飯食べながらゆっくりお話してくだせぇ」


 清次にそう勧められ、リンは夕食を組長と一緒にとり、すぐに帰って行った。人払いを徹底し、組の者でさえも2人が何を話していたかは知らない。
 ただそれ以後、時折本家にプラチナブロンドの美しい髪の少年が現れるようになったという。

 その日の夜遅く、狼の部屋に組長が来た。


「おぅ。完成したか」

「……うん」

「清次に学校に行ったなんぞと言わせて何をしとるんかと思えば……、お前、話を聞いておったんじゃろ?」

「途……中まで」

「清次じゃな……。あいつは狼のことになると、いらん世話を焼きおって」

「でも……聞いてよかった」

「そうか」

「じいさん。俺、変わった」

「そうじゃの」


 組長は孫を思うおじいちゃんの、優しい優しい表情を狼に向け、部屋を出て行った。

 ベッドでうつ伏せに寝る狼の背中には、微笑んでいるように見える菩薩。
 その瞳は綺麗な緑色をしている。

 狼はこの日、リンを絶対に守ると決めた。怪我をさせたりなどしない、ずっと側にいて守り抜くと決めた。

 決めたのに……。


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