04




「あぁ?」

「お前のアダ名、決めたよ」

「……なんだよ?」

「『タロ』っ!」

「んな犬みてーなので呼んだら殺すぞ」

「だってお前犬みたいなんだもん。凶暴で人に懐こうとしねー野良犬。お前にぴったりだよ」

「……帰る」


 狼は立ち上がり、スタスタと歩き出す。


「結構いいと思ったんだけどなー。じゃーなー! また明日!」

「…………」


 『また明日』……。
 また明日、か。


「……また、明日」


 リンに届くことはなかったが、狼はそう呟いた。その顔には少し笑みを湛えていた。

 次の日も狼はいつものように街をブラブラと歩いていた。どこかに不良が屯している場所はないかと探しているのだ。

 しばらく歩いていると突然後ろからドンっとぶつかられた。それから一瞬遅れて胴体にひどい痛みが走る。


「……っ、……?」

「悪いな。こうしねぇと俺の命がヤベェんだ」


 またさらに激痛が走り、背後にいた人物は逃げて行った。
 狼はそいつを追いかけようとしたが、思うように体が動かない。


「……?」


 熱い……。なんだ……?

 狼は背中に左手を伸ばし、痛みと熱さを感じる部分に触れてみた。
 ヌルッとした感触。手を見てみるとベットリと真っ赤な血が付いていた。

 あー……刺されたのか。
 まーいいや。とにかくぶっ壊す奴ら探して……?

 ……足が動かねぇ。
 目が霞む……フラフラする……。

 狼はその場に膝から崩れ、前に倒れた。
 周りの人間は血だらけで倒れた狼を見て騒ぎ出す。

 ……俺を見て騒いでやがる……。
 本当ならあんなのすぐに全員ぶっ壊すのに……。
 体が動かねぇ……。音もなんか遠く感じる……。
 ……寒ぃ……。

 あぁ、俺……壊れたんだ。
 壊された……。

 もうあいつに会えねぇのかな……?
 また明日って言ってたのに。……また明日って言ったのに。

 ……友達になればよかった。

 今からでも遅くねぇかな……?

 俺と……、友達になってくれるかな……?


「……リン」


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