03




「……言わねー」


 その綺麗な瞳からフイっと目を逸らし、またボソボソと言った。


「あん? 一匹狼でも貫いてんのかー?」


 狼(オオカミ)と言われると初めから名前を言うつもりなどないが、狼(ろう)はさらに言いづらくなる。


「そんなんだと勝手にアダ名付けて呼ぶぞ。いいのか? はっずかしーアダ名付けんぞ」

「呼ばなくていい……。お前とつるむ気なんかねーよ」

「なんだよー。いいじゃん友達になるくらい。俺、今日ここに越して来たばっかなんだよ。ダチになってくれよ?」

「……お前うるせーよ」


 狼はそのままリンと名乗った少年を残し、その場から去ってしまった。


 なんだあいつ? 友達?
 ……友達?

 そんなん言われたの……初めてだ。

 次の日も、同じように不良共を殴っているとリンが現れた。『おっ、またやってるなー』という至って軽いノリで楽しそうに見物をするのだ。
 少し狼が危なくなると、リンは狼に加勢した。

 次の日も、その次の日も。


「なんなんだお前……?」

「んー? 友達になってくんねぇから、『あれ? そういやあいつといつの間にかずっと一緒にいる……?』だーいさーくせーんっ! 実施中!」

「……は?」

「まー何でもいいだろ。お前といると楽しいからよ。勝手に作戦にハマってろよ」

「ワケわかんね……」

「お? お前初めて笑ったな!」

「あ゙? 笑ってねーよ!」

「今度は初めて俺見て喋ったっ!」

「だ……っ、黙れ!」

「照れてる〜!」

「照れてねぇっ!!」

「あはははっ」

「……っ」


 狼はムッとした顔を無理矢理作り、俯いた。それを見てリンは一層笑い声をあげた。


「そーだ、決ーめたっ!」


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