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 うぜぇ……

 うぜぇ、なんもかんもうぜぇんだよ……!

 全部……壊れちまえよ……
 全部、全部……

 ……壊しちゃお……


「……ヒィッ……! 若すんません! 許してください! 許しヴッ……! ゴホッ……ガ……ァ……」

「許す……? 許すってなんだ……。壊すんだよ。なんもかんも全部、全部。お前も、壊れろ。俺に……壊されろ……」


 指定暴力団、五代目野田組本家の日本庭園を思わせる美しい庭。

 そこに苦痛に顔を歪め、涙や血や涎でグチャグチャの男がうずくまっている。頭を抱え、膝を丸めて精一杯自分の身を守りながら。


「全部壊して、壊して……うぜぇもんなくして……すっきり……」


 ボソボソと口を動かす少年は、狂ったようにうずくまる男を蹴り、庭に配置された木々や岩なども崩していく。グチャグチャに。

 上半身に何も纏っていない少年の背中一面には菩薩の彫り物。色の入っていない未完成の菩薩は全くの無表情。まるでこの少年のように生気が感じられない。

 その場にいたヤクザの構成員でさえ、誰も手が付けられないほどに暴れる少年の肩に、グッと手が置かれた。


「……ハァ、またかよ……」

「若、まただなんて言わんでおくんなせぇ。子分共もえらくビビってんでさぁ。このへんにしてやって下せぇ」

「離せ……出てくる」

「へい! 行ってらっしゃいまし!」


 このおかしな話し方をする男は、野田組のナンバー2と言われる田辺清次だ。まだ若いが、組員からの信頼は厚い。清次に渡されたシャツを着て、少年は外へ出て行った。


「しょうがない奴じゃのぉ。おぅ清次、狼にやられた奴の手当してやれ」

「へい、組長!」

「外で何もせんかったらいいんじゃが……。……無理かの」

「若ならきっとすぐに春休みで浮かれた奴らを殴りまさぁ」

「……じゃろうな」


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