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俺は屋上の扉を開け、悠仁の名前を呼ぶ。
「悠仁ー」
坂元先輩や寺門先輩に噂されているなどとは知らずに、ゴロゴロしていた悠仁が起き上がってそれに応えた。
「……チアキ。こっち……」
「いた。なんでいつも違う場所で寝るの?」
悠仁に近付きながら訊ねる。そして悠仁の隣に座ると、悠仁は特に何を言うわけでもなく、俺の太ももの上に頭を置いて、寝転がった。
「んー……」
「特に意味はないんだね」
「うん」
悠仁が喋らなくても、表情だけで意思をくみ取れるようになってきた。
「ねぇ、悠仁? 最近俺おかしいんだ。悠仁が他の誰かと喋ってるのを見ると、嫌な気持ちになるんだ」
「……それ、おかしいの……?」
「え?」
「俺も……」
「悠仁も俺が誰かと話してるの見ると、嫌?」
「……嫌」
「そっかぁ。じゃあおかしくないか」
「うん……」
end.
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