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 そして、ついにやって来た29日。俺はリビングのソファの上でバタバタと足を動かしたり、とにかく落ち着きがない。
 1人でテンパっていると、インターホンの音が室内に響いた。


「あ、悠仁だ! はーい!」


 走って玄関へ行き、ドアを開ける。俺の顔を見ると、悠仁は笑って俺を抱きしめた。


「チアキ……おはよ……」

「おはようっ」


 こうやって毎朝迎えに来てくれるのは、今日で最後なのかな……? こんな風に抱きしめられるのも……。
 なんか、寂しいな。

 特別棟の2階にある大教室で悠仁の集会が始まろうとしていた。俺は直前になってビビりを発揮してしまい、儀式が始まるまで一般棟の生徒会室で待機することになった。
 一緒に生徒会室にいてくれることになった寺門先輩が、大教室をモニタリングできるようにしてくれた。


「集会を始める前に先日あった出来事とそれに対する僕からの処分についてお話します」


 200名入れる大きな教室には、数十名の神宮寺悠仁親衛隊隊員が席についている。
 その隊員たちの前に立って、マイクを使い話し始めたのは、悠仁の親衛隊隊長の森つばさ先輩だと寺門先輩が教えてくれた。


「先日、副隊長である内藤君が悠仁様と仲良くしている生徒に対し、制裁を加えようとしました」


 教室内がそれまでのソワソワ浮き足立っていた空気から打って変わって、モニター越しにも伝わるくらいにピンと張りつめたものになった。


「隊長である僕に内緒で。僕に報告すれば、反対されると思ったからでしょう。僕は制裁反対派だから。……幸い、制裁は悠仁様を始め、生徒会の方々のおかげで未遂に終わりました。そして、制裁を企てた佐藤君に対する僕からの処分は、親衛隊からの除籍と、今後悠仁様に近づこうとすれば容赦なく制裁を加える、というものです」


 教室内は静まりかえっている。


「みんなももう分かっている通り、今日悠仁様はこの集会で儀式をされます。その相手方に対し、またこのような馬鹿なことをしようとすれば……分かっていますね? ……内藤君より重い処分を下します」

「圭吾の親衛隊の次に統制がとれていると言われるのはよ、森の功績に他ならないんだ。悠仁はあの通りボーっとした奴だけど、森のおかげで親衛隊が成り立ってる。お前も森にはちゃんと挨拶とかしとけな」

「はい!」


 寺門先輩がそう言うなら、そうします!


「それでは、4月の集会を始めます」


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