08
俺はそれからの日々を思い返してみた。
悠仁の言う『守る』は、親衛隊に口をきいてくれるとかではなかった。ただ、ひっついてきていただけだった……。
朝、眠そうな顔で俺の部屋まで来て抱きしめられる。
晴太と神楽坂と4人で寮の食堂に行って朝食を食べて、そのまま登校。俺の教室まで送ると別れ際にまた抱きしめられる。
午前中の授業が終わる頃に俺の教室まで迎えに来てまた抱きしめられる。
朝と同じ4人で校舎の食堂に行って昼食を食べて、俺の教室でまた抱きしめられる。
1日の授業が終わる頃に迎えに来てまた抱きしめられて、4人で下校。
俺の部屋まで送り届けてまた抱きしめて帰って行く。
その繰り返し。
天気がいい日は、昼ごはん食べたあと屋上で一緒に寝たり。とにかく、寮の部屋と教室以外では常に一緒。守ってくれるのはありがたいんだけど……スキンシップ激しくない?
でも、親衛隊からの嫌がらせとかが全くない。靴に画びょうとか、靴隠されるとか、教科書破られるとか、机に落書きされるとか、そんなレベルのことすらない。
むしろ、敵意を向けられてる感じじゃなくて、どちらかと言えば好意的な視線を送られてる気が……。
……なんで?
「それは、千秋の前では神宮寺先輩が喋ったりとか、笑ったりとかするからだと思うよ」
「どゆこと?」
「だからね、神宮寺先輩って、無口で無表情な人なのに……」
「そんなことないじゃん。晴太も神楽坂も知ってるだろ?」
「いや、だから、それは千秋の前だけなんだってば」
「うん?」
「みんな千秋といる時の神宮寺先輩を見て驚いてるの。親衛隊が千秋に何もしないのは、そういう神宮寺先輩を見たいからじゃない?」
「つまり?」
「だからぁ〜」
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