06




 悠仁と出会ってから、1週間と少し経った。1−Bの窓際の席に座って、毎日毎日、天気を見ては悠仁のことを考えていた。
 ぼんやりしている俺を余所に、突然騒がしくなる教室内。男子の精一杯の高い悲鳴のような黄色い声が響いた。

 なに? 騒がしいなぁもう。俺は今日も眠いの。教室では静かにしてよ。


「チアキ……」

「なに? ……え! は!? 神宮寺先輩!?」


 俺の前に突然現れたのは、どうやらこの騒ぎの原因となっていた悠仁だった。


「…………」


 急にしかめっ面ー? なになに? 俺なんかした? 名前呼んだだけじゃん!
 ……あ。名前か。


「……悠仁?」


 すっげー小声だけど名前で呼んだよ。文句ないでしょ。だから早く用件を言って帰って下さい。
 なんか俺すげー睨まれてます! 目が合うと死ぬレベルに睨まれてます!


「なんで……来てくんないの……?」


 その言葉で、なぜ教室にわざわざ悠仁が来たのか、やっと分かった。


「あ……あの、」

「あれから……ずっと待ってた……」


 屋上で会う約束をした件について、他の生徒に聞かれたくない。俺が慌てて弁解しようとするも、悠仁が珍しく単語ではなく文章で喋り続ける。

 やっぱり今すぐ帰って!
 なんか携帯で電話かけてる人がいるよ!? 俺を睨みながら何かを言っているよ!? 俺ヤバくね? もう親衛隊には報告されてると考えた方がいい?
 どうしよう!
 どうしよう!?

 かなり焦る俺。そのせいで次の悠仁の行動を避けることができなかった。


「チアキ……」


 ぎぃやぁぁああ!! 抱きしめられてるぅ! 死刑確定!
 はい! 俺、今日死にます!


「は、はは離して下さいぃい!」

「やだ……」


 終わった! もう終わった!


「わかりました! 行きますから! てゆーか今行きましょう! すぐ行きましょう! だから離してぇ!」


 もう屋上に行こうが行くまいが一緒じゃーい!
 もはや完全に開き直った。屋上へ行くという言葉を聞いて、悠仁は満足そうな顔をして、俺の前に右手を差し出した。


「うん……行こ……」


 何その手! 何その顔!! 手つなげってか? つなげってか!?


「手、つなぐの?」


 違うと言ってぇー!!


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