05
俺はソファから立ち上がった。
「……俺、服着替えてくんね」
「着替えたら3人で食堂行こう?」
「……うん」
寝室に入って制服を脱いだ。カッターシャツを脱いだとき、胸元で皮の紐が通った鍵が揺れて、肌にひんやりとした感触が伝わる。
「せっかく、くれたのにな」
約束したけど……俺、行けないや。やっぱり、親衛隊は怖いもん。
俺が傷つけられるのは構わないけど、晴太や神楽坂にまで迷惑かけるかもしれない。会社にも圧力をかけたり、潰したりするって聞いたことあるし。家族にまで迷惑かけるかもしれないことになるなら……。
俺、約束破る嘘つきって思われたって……いいや……鍵、返せないし、閉まっとこう。
ベッドと一体化した学習机の引き出しに、鍵をしまう。納得できていない気持ちを振り切るように、力強く閉めた。
「おまたせ。行こ!」
無理に明るく振る舞って声を掛け、3人で寮の食堂へ向かった。
食堂でご飯を食べながら、俺は生徒会役員だけが使用することができる中二階の特別フロアに目を向けた。
そうだ。生徒会ってあんなに遠い人たちなんだ。あんな特別なところを与えられて、みんなに見られながら食事をするような、違う世界の人たち。
……友達になんか、なれるわけないじゃん。
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