02
俺の膝で寝始めてから、十数分後、神宮寺先輩が目を開いた。
「ん…………誰……?」
「あ、起きました? 俺は1年の安藤千秋っていいます」
「鍵……」
「あ、俺ピッキング得意なんですよ。……あ。そっか、先輩が鍵閉めたんだ。入っちゃダメでした?」
「なんで……?」
『なんで』ってなにが?
あ、俺の足見て戸惑った顔してる。なんでこんな状態なのか? かな。
単語で話す神宮寺先輩にかなり戸惑いつつも、言いたいことをかすかな表情の動きや視線や行動で汲み取ってみる。
「先輩、なんかうなされてたんですよ。それで、ちょっとなんだかんだで先輩が俺の足に」
「ふーん……」
納得したのか、してないのか。分からないが、俺の太ももに頭を乗せたまま寝返りを打つ先輩。
「……まくら……いい、ね」
……気に入ったのか。俺も悪い気はしないというより、むしろ楽しんでいる節があるけどね。そして、再びウトウトし始めた先輩が俺の顔を伺うようにチラっと見る。
「先輩、寝ていいですよ」
「うん……ありがと……」
そうだ、背中ポンポンしてあげよう。先輩これ好きっぽいし。てか俺の腰に抱きついてきて、なんかちっちゃい子みたいだな。可愛いなぁ。
「いい……におい……」
『いい匂い』!?
俺の腹に顔くっつけて……犬? 犬なの? というか今気付いた。この状態じゃ、俺は寝れない……。
俺のお腹に顔、というか鼻を寄せたまま、寝息を立て始める先輩。可愛いから……俺は眠れなくてもいいか。
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