01
「ふぁ〜あ……ねむ……」
宝生学園高等部1ーBの教室、窓際の後ろから2番目に座る俺、安藤千秋が盛大なあくびをかました。
夕べの夜更かしが祟ったたなぁ〜。授業なんか受ける気しないよ。
「晴太〜俺、次サボるね」
「どこ行くの?」
「ん〜、天気いいし……屋上でも行ってみようかな」
そう言い残して、俺は教室から出た。
先日、高等部に入学したばかりではあるが、春の日差しの気持ちよさには勝てない。真面目そうに見られるけど、本当はだらしない性格。眠気には正直に従ってしまうのだ。
「あ、千秋っ屋上はだめだ……って、いない。ま、鍵かかってるだろうし大丈夫だよね」
屋上へと出られる扉の前までやって来た。だけど、その扉はしっかりと鍵がかかっていた。
「あれ? 鍵かかってる」
高等部じゃあ屋上は出ちゃダメなのかな? それならそれで逆に好都合。誰にも邪魔されずに寝れるし。
「俺ピッキング得意だもん。……よし、開いた!」
たまたまもっていた安全ピンで鍵を開け、屋上へと出る。まさに昼寝日和。どこで寝ようかと一先ずウロウロしてみることにした。
するとどこからか唸り声が聞こえてきた。
「……うう、ぁ、ゔぅ……」
「なに? この声……」
あ、誰かうなされてる。こんな気持ちのいい空の下でうなされながら眠るなんて、もったいない。
「大丈夫だよ。怖いことなんてない。大丈夫。大丈夫だよ」
俺はその人物の横に足を投げ出して座り、お腹をポンポンと一定のリズムで叩きながら声を掛けた。
しばらく続けていると、汗びっしょりで辛そうにして寝ていた人物の表情が和らいだ。
「よかった。……あれ? この人どっかで見たこと……あ、神宮寺先輩だ!」
生徒会副会長で、王ランキング2位の超有名人、神宮寺悠仁先輩であると今さら気付く。
うわー! 有名人見ちゃったってか触っちゃったー。すげー。すごい体験しちゃったよ、これ。
「……ん゙ー……」
あぁ、手が止まってた。神宮寺先輩はポンポンされんのが好きなんだな。
かわいー。
「……ん」
うわ! なんだぁ?
寝返りうって、太股の上に頭乗っけてきたよ。これって膝枕じゃん!
「んー……」
しかも腰に腕回してきたしー! なんで寝ながらこんな状態になれんだよー! あ、今少し笑った? いい夢に変わったのかな?
……頭とか撫でてもいい、かな?
- 53 -
*前 | [次#]
[戻る]