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「ふぁ〜あ……ねむ……」


 宝生学園高等部1ーBの教室、窓際の後ろから2番目に座る俺、安藤千秋が盛大なあくびをかました。
 夕べの夜更かしが祟ったたなぁ〜。授業なんか受ける気しないよ。


「晴太〜俺、次サボるね」

「どこ行くの?」

「ん〜、天気いいし……屋上でも行ってみようかな」


 そう言い残して、俺は教室から出た。
 先日、高等部に入学したばかりではあるが、春の日差しの気持ちよさには勝てない。真面目そうに見られるけど、本当はだらしない性格。眠気には正直に従ってしまうのだ。


「あ、千秋っ屋上はだめだ……って、いない。ま、鍵かかってるだろうし大丈夫だよね」


 屋上へと出られる扉の前までやって来た。だけど、その扉はしっかりと鍵がかかっていた。


「あれ? 鍵かかってる」


 高等部じゃあ屋上は出ちゃダメなのかな? それならそれで逆に好都合。誰にも邪魔されずに寝れるし。


「俺ピッキング得意だもん。……よし、開いた!」


 たまたまもっていた安全ピンで鍵を開け、屋上へと出る。まさに昼寝日和。どこで寝ようかと一先ずウロウロしてみることにした。
 するとどこからか唸り声が聞こえてきた。


「……うう、ぁ、ゔぅ……」

「なに? この声……」


 あ、誰かうなされてる。こんな気持ちのいい空の下でうなされながら眠るなんて、もったいない。


「大丈夫だよ。怖いことなんてない。大丈夫。大丈夫だよ」


 俺はその人物の横に足を投げ出して座り、お腹をポンポンと一定のリズムで叩きながら声を掛けた。
 しばらく続けていると、汗びっしょりで辛そうにして寝ていた人物の表情が和らいだ。


「よかった。……あれ? この人どっかで見たこと……あ、神宮寺先輩だ!」


 生徒会副会長で、王ランキング2位の超有名人、神宮寺悠仁先輩であると今さら気付く。
 うわー! 有名人見ちゃったってか触っちゃったー。すげー。すごい体験しちゃったよ、これ。


「……ん゙ー……」


 あぁ、手が止まってた。神宮寺先輩はポンポンされんのが好きなんだな。
 かわいー。


「……ん」


 うわ! なんだぁ?
 寝返りうって、太股の上に頭乗っけてきたよ。これって膝枕じゃん!


「んー……」


 しかも腰に腕回してきたしー! なんで寝ながらこんな状態になれんだよー! あ、今少し笑った? いい夢に変わったのかな?
 ……頭とか撫でてもいい、かな?


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