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僕は管理棟のエレベーターに乗って、太一に電話をかけた。
『もしもし? 幸ちゃん、なんかあった?』
「たっちゃーんっ、今すぐ管理棟まで来て? ……俺と付き合いたいなら5分以内に来い。いいな」
『えっ……ちょ』
それだけを言い、通話を切った。所謂ガチャ切り。携帯をしまい、腕時計を見ながらカウントダウンを始める。
あと4分48秒……3分……2分……1分……30秒……10、9、8、7……。
「幸ちゃ……っ!」
息を切らせた太一が、走ってやって来た。
「ギリギリセーフ! 帰ろっかっ」
「え、あ、うん」
寮への舗装された道を並んで歩き出す。
「どこにいたのっ?」
「あー、寮の部屋」
寮!?
走って5分で来れるもん? 僕なら歩いて20分はかかる距離なのに。
「よく間に合ったねー?」
「まぁ、けっこう本気で走ったからね」
「おつかれさまっ」
「それで、なんかあった? すぐに来いとか今まで言ったことないじゃん。……困りごと?」
「ん〜、まぁとりあえず帰ろうっ? 寮帰ってから言うから、ね?」
「……うん」
僕が太一と2人で寮に帰った時には、いつも以上にすごい視線を浴びた。
少し前にすごい勢いで走って出て行ったであろう太一が、僕と一緒に戻ってきたのだから、当然っちゃ当然だけど。
1階のロビーで、凄まじい視線とヒソヒソ話を浴びせられながら、それを通り抜けてエレベーターに乗った。
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